人権と諸宗教対話が平和と発展の鍵――バチカン国務省外務局長(海外通信・バチカン支局)

バチカン国務省外務局長(外相)のポール・リチャード・ギャラガー大司教は2月25日、ジュネーブの国連欧州本部で開催された国連人権理事会で演説した。

ギャラガー師は、より安定した世界を築き、平和を実現していくために、「人間の尊厳を基盤として国際法によって定められた人権の規定と、諸宗教対話が具体的発展のための鍵を握る」との確信を表明した。

また、世界では現在、「人間本性の分断化現象」が進行しており、分断された人々がそれぞれに主張する“新しい権利”が対立し合っていると指摘。そのため、人々は全ての権利の基盤である、あらゆる人間に共通する本性を認知し得なくなっており、その人間の弱さが究極的には基本的人権を蹂躙(じゅうりん)し、人類の凋落(ちょうらく)という憂慮すべき事態を招くと警告を発した。自らを含めて全ての人の尊厳性を認知できず、それぞれが自身の尊厳のみを追い求める時、人々は対立し、利己主義によって人類全体の持続可能な発展が疎外されるとの意味合いだ。

同師は、バチカン外交にとって、「信教と良心の自由、そして諸宗教対話が、『持続可能な開発のためのアジェンダ2030』(15年に国連で採択)の実現に向けた基本条件」になると強調。このアジェンダを実行に移していくには、経済や統計といったことだけでなく、「道徳、霊的、宗教的側面をも考慮しなければならない」と訴えた。

その上で同師は、2月にアラブ首長国連邦(UAE)・アブダビで行われた「人類友愛のための国際会議」で、ローマ教皇フランシスコとイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」のアハメド・タイエブ総長が署名した「人類の友愛に関する文書」に言及。対話、相互理解、寛容の文化の促進、他者の受容、人間同士の共存が重要であり、これらが経済、社会、政治、環境分野における諸問題の解決に大いに貢献するとの見解を述べた。世界の平和、発展といった人類共通の課題に挑戦していくには、「全人類にとって共通の尊厳性」「人類の友愛」といった視点が不可欠であるという主張だ。

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