人権と諸宗教対話が平和と発展の鍵――バチカン国務省外務局長(海外通信・バチカン支局)

カシミール紛争激化の予防を――印パの諸宗教者

1947年のインド・パキスタン分離独立以来、両国が領有権を主張するカシミールのインド実効支配地域で2月14日、インド治安部隊を標的とした自爆テロが発生し、少なくとも40人が死亡した。パキスタンを拠点にカシミールの分離独立を求める過激派組織が犯行声明を出し、インド空軍は26日、国境を越えてパキスタン北東部にあるテロ組織の拠点を空爆した。

両国は核兵器を保有しており、紛争激化に憂慮するパキスタンの諸宗教指導者40人が同28日、ラホールで和平のための諸宗教対話会議を開き、「われわれパキスタン国民は、インドとパキスタンの和平、和解を望んでおり、結束して促進していく」とする声明文を発表した。

「高まるインドとの緊張に憂慮する」。そう発するイスラーム、キリスト教、ヒンドゥー教、シーク教の指導者たちは、軍事衝突が共存を脅かすことがないように願い、インドの軍事介入を非難しつつ、「パキスタン国民は、無辜(むこ)の人々を殺害する、あらゆるテロ活動、あらゆる過激主義を非難、拒否する」と訴えている。その上で、平和を構築するには、交渉のテーブルに座り、双方がじかに出会っていくことが必要であり、「カシミールという悲痛な問題を含め、対話によって問題に対処していく以外に解決の道はない」と示している。

ラホールでの諸宗教者による和平会議に参加したカトリックのジェームス・チャンナン神父(ラホールの「平和センター」責任者)は、「カシミールの住民にさらなる苦を与えることなく、これまでの問題を究極的に解決していくには国連の調停が必要であり、今日ほど求められている時はない」と主張。インドのカトリック司教会議議長を務めるオズワルド・グラシアス枢機卿(ムンバイ大司教)は、インドの治安部隊に対するテロ攻撃を非難しながらも、「あらゆる軍事選択に対して“拒否”だ」との考えを表し、両国の首脳に「対話の道」を選択するよう求め、「拙速に、誤った解決策を探さないように」と呼び掛けている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)