アブダビでの「人類友愛のための国際会議」――世界の宗教史の流れと立正佼成会(海外通信・バチカン支局)

一方、イスラーム世界における諸宗教対話――現代の国際情勢の中で、最も重要とされるこの大きなプロセスに本会は招かれ、参加している。その端緒は2008年だ。

この年の7月、イスラーム世界連盟主催の「国際諸宗教対話会議」がスペイン・マドリード市内のホテルで開催された。この会議は、サウジアラビアのアブドッラー国王の強い指導性を背景に開催され、席上、招聘(しょうへい)を受けて出席した庭野日鑛会長が仏教の立場からスピーチを行った。

その後、アブドッラー国王の提唱により、「アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター」(KAICIID)が設立される。KAICIIDは、サウジアラビア以外に、オーストリア、スペイン、バチカン(オブザーバー)が創始国に名を連ねており、光祥次代会長が理事に就任した。

光祥次代会長は、KAICIIDが主催する、文化間、宗教間の対話・協力のイニシアチブに参加する。加えて、16年にはモロッコ・マラケシュで行われた、同国のワクフ(宗教寄進制度)・イスラーム省とUAEに本部を置く「イスラーム平和促進フォーラム」の共催による『ムスリム多数派コミュニティーにおける宗教的少数派の人権――法的枠組みと行動への呼びかけ』と題する国際会議に招聘を受け出席した。昨年は、アブダビで『非ムスリム社会におけるイスラームの未来――チャンスとチャレンジ』をテーマに行われた「国際ムスリム共同体会議」に正式招待者として出席し、スピーチを行っている。

今回の「人類友愛のための国際会議」について報道する現地のメディアは、同会議の参加者の一人として光祥次代会長を写真と記事で紹介した。イスラーム世界が女性の仏教指導者に注目するのは、一つにはイスラーム世界で促進すべき課題として女性の社会進出が背景にあるからであり、平和にとって不可欠な多様性を表しているからといわれる。

教皇フランシスコは2月5日、アブダビからの帰路の機上で随行記者と懇談した際、タイエブ総長と共に署名した文書について、「第二バチカン公会議の精神に沿うもの」と語った。そして、翌6日のバチカンでの一般謁見(えっけん)では、「2017年のアズハルでの出会いに継いで、今回の訪問がキリスト教とイスラームとの対話と、人類友愛に基づく世界平和の促進の歴史に新たな一ページをもたらした」と強調した。その上で、「教皇として初めてアラビア半島の地を踏むことになったが、聖フランシスコとエジプトのイスラーム指導者が出会った800年後に、フランシスコを名乗る教皇によって実現された神の摂理」について述べた。

今後も、諸宗教対話・協力による平和の実現の取り組みをバチカンから届けていく。

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