「普門館からありがとう~吹奏楽の響きたちへ~」 1万2000人が別れを惜しむ
17時、最後の組が舞台に入った。その30分後には、来場者と共に閉会セレモニーが行われ、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)のメンバー(本間千也、ガルシア安藤真美子、今村岳志、堀風翔、近藤陽一)が金管五重奏を披露。『普門館へありがとう』と題し、「アメイジング・グレイス」「主よ人の望みよ喜びよ」など、計5曲を奉納演奏として普門館に捧げた。演奏後、「星条旗よ永遠なれ」を「普門館よ永遠なれ」との願いを込めて、来場者と大合奏した。
TKWOのチューバ奏者・近藤陽一氏は、「僕も、中学、高校と『目指せ普門館』を合言葉に練習を重ねました。その時、この舞台に立つことはかないませんでしたが、特別な場所であったことは確かです。普門館がなくなることはとても残念ですが、時代が進む中で普門館があったこと、それは皆さんの記憶から消えないと思います。今日、来場されていた方々を見ていて、そう強く感じました」と語った。
静寂に包まれたセレモニーの最後、あいさつに立った菅野泰正佼成文化協会長は、普門館の象徴である「黒い床(ブラックステージ)」に触れて、こう感謝の言葉を述べた。
「30年前、ここで照明を落とすスタッフをしていました。照明からステージを見ると、コンクールはブラックステージじゃないと映えないんですよ。本当に吹奏楽のためにあったホールだったと思います。普門館に成り代わり、御礼申し上げます。ありがとうございました」
18時半、会場のライトは客席から徐々に明かりが消えていく。舞台上に照らされた青いライトが最後の来場者を見送った。
中学生の時、普門館で金賞を受賞した井坪真寿美さん(29)は、同じ吹奏楽部に所属していた後輩と一緒に訪れた。「この舞台で演奏したことは、かけがえのない一生の宝物です。今日は、『普門館にありがとう』と伝えに来ました。あの頃、私たちの“おはこ”だった『宝島』を会場に集った人たちと演奏できて、本当にあの頃に戻ったようで幸せなひとときを過ごせました」と笑みをこぼし、会場を後にした。
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