伝統芸能が地域の“宝”になる 長野・大鹿村で庭野平和財団がGNH現地学習会

300年前から受け継がれてきた「大鹿歌舞伎」

経済的な豊かさだけでなく、自然環境や伝統文化の保全などを含めて人々の幸福の度合いを基に、豊かさの意味を考える庭野平和財団のGNH(国民総幸福)現地学習会が10月20日から22日まで、長野・下伊那郡大鹿村で行われた。交流のある諸団体から6人が参加した。

『地域社会とその伝統の継承』をテーマに行われた今回は、「大鹿歌舞伎」の発祥地を訪れ、伝統文化の保存や後進への継承について学んだ。

大鹿歌舞伎は300年以上前から、同村の各集落で神社の祭礼に合わせ、奉納されてきた村芝居。村人による歌舞伎(地芝居)が禁じられていた江戸時代にも途絶えることなく、暮らしの核として受け継がれてきた。

近年では昭和30年代に入り、村長を会長として「大鹿村無形文化財保存会」(現・大鹿歌舞伎保存会)が設立され、50年には保存会による働き掛けで村内の中学校に歌舞伎クラブが発足した。さらに、学習指導要領の改訂に伴い、大鹿歌舞伎を「ふるさと学習」の一環として小中学校の授業に取り入れるなど、村ぐるみで後継者の育成に取り組んできた。昨年3月、国の重要無形民俗文化財に指定された。

大鹿歌舞伎の「師匠」から話を聞く参加者

村を訪れた一行は20日、70年にわたり大鹿歌舞伎を支えてきた「師匠」の片桐登さん(芸名・竹本登太夫)と面会した。

現在90歳の片桐さんは、17歳で大鹿歌舞伎の初舞台を踏み、村役場に勤務しながら、太棹(ふとざお)三味線を弾き語る「太夫」の修業を積み、昭和61年から平成20年まで、村唯一の師匠として後進の育成に努めた。

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