紛争地域での平和構築とは WCRP/RfP日本委がフィリピンで「平和と和解のためのファシリテーター養成セミナー」

ミンダナオ出身者で、MPIのファシリテーターを務めるレグロ氏

翌5日には、アジア各国のNGO関係者や行政職員、宗教者に平和構築のトレーニングを提供するミンダナオ・ピースビルディング・インスティトゥート(MPI)のマイラ・レグロ氏が、『諸宗教による平和構築』をテーマに講義。平和構築に諸宗教間対話が必要な理由として、レグロ氏は、どの宗教にも、普遍的な平和の精神が説かれている点を強調。宗教は対立の道具に利用されてきたが、平和の礎になり得るとし、宗教指導者は平和に向けて人々を導くとともに、宗教共同体や地域が抱える問題を政治や行政の場に訴え、紛争を予防して問題解決に努める役割があると力説した。

この後、参加者は、平和構築に必要な「要素」「登場人物」「具体的なアプローチ」「原理」の項目ごとにグループをつくり、意見を交換。その内容を模造紙にまとめ、発表した。

参加者はグループで話し合った内容を発表

「具体的なアプローチ」を担当したグループは、まずは、「対話を行う双方の意思を確認すること」を挙げ、次いで「相手の宗教や生い立ちを知るといった行動を促すこと」につなげると発表。対話への関心が薄い人に対しては、交流の場をつくるといった働き掛けが必要と回答した。

グループ発表を受け、レグロ氏は、宗教者が和解に向けた対話を進めるには、まずは「紛争で傷ついた自らを癒やし、先入観をなくすこと」(Binding)に尽くし、「自分の所属する組織を整え、諸宗教協力の土台をつくること」(Bonding)を果たし、その上で「他のコミュニティーとの信頼関係を構築し、紛争解決を進める」(Bridging)との「3B」のプロセスが重要になると解説した。ただし、「実行は容易ではない」とし、粘り強く取り組む必要性を示唆した。

一行はミンタルの日本人墓地を訪問。折り鶴を供え、慰霊の誠を捧げた

講義の後、参加者はミンタルのレイ・アマドール・タタ町長の案内で日本人墓地に向かい、第二次世界大戦や紛争の犠牲者に慰霊の誠を捧げた。6日はマニラ(ルソン島)に移動し、サント・トマス大学でWCRP/RfPフィリピン委員会事務総長のリリアン・シソン博士、副事務総長のパブリト・バイバド・ジュニア教授と面会し、カトリックのキアポ教会を訪れた。7日にはケソン市のミリアム大学平和教育センターのロレタ・カストロ氏から、他大学のムスリムの学生との交流活動などについて説明を受け、午後に末日聖徒イエス・キリスト教会を訪問した。

参加者からは、「平和を築くには正しい知識と戦略を持ち、創造力を駆使する必要があると学びました。日本でネットワークを広げ平和教育についての研究を深めたい」「マニラに住む若者はミンダナオの問題を知らないという話を聞いた時、日本における沖縄の問題を連想しました。社会で起きていることに意識を持っていかなければならないと思いました」「紛争和解に取り組む実践者の声を聞けたことで、平和構築には段階的な取り組みがあるのだと知りました。対話の場をつくるなど身近な場面で応用していきたい」との感想が寄せられた。

ミンタルの小学校で

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