聖心女子大学でロヒンギャ問題の緊急連続シンポジウム

ロヒンギャ難民 問題の今後

上智大学総合グローバル学部教授の根本敬氏は、ロヒンギャへの排他的な国民意識が生まれた背景に言及した。ミャンマーは独立の際、「イギリスによる侵略が始まる前年の1823年以前から定住していた民族を国民とする」と定め、この認識が国民に浸透していると説明。ロヒンギャを国民と認めない最大の理由は、宗教や人種の違いよりも、ミャンマー連邦の土着民族ではないという“刷り込み”によるものと強調した。

さらに、こうした状況下で、アウンサンスーチー国家顧問は昨年8月、コフィ・アナン元国連事務総長を中心としたラカイン問題検討諮問委員会を設置。1年間の調査を経て、ムスリムの国籍認定手続きの迅速化などの提言を盛り込んだ最終報告書を発表した。根本氏は、こうした経緯を説明し、「国際社会にできることはアウンサンスーチー氏を非難することではなく、彼女が取り組もうとしている委員会の答申への取り組みをしっかりとバックアップすること」と述べた。

ロヒンギャ難民の今後について言及したのは、バングラデシュで長年支援活動に取り組むNGO「ジュマ・ネット」代表の下澤嶽氏や聖心女子大学グローバル共生研究所所長の大橋正明氏ら。下澤氏は、本国帰還に関する両政府の合意に触れながら、過去のロヒンギャ難民の帰還プロセスを紹介した。1992年に流出した25万人の帰還は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の調整のもと行われたが、13年の期間を要した上、帰還を望まない難民も送還されたと説明した。今後の支援に必要な視点として、帰還の長期化に備えた難民キャンプの衛生環境の整備と教育支援、人身売買や人権侵害の監視などを挙げた。

一方、大橋氏は、本国帰還後もロヒンギャの安全が確保されるかは不明で、根本的な解決がなされなければ、これまでと同様に国軍などから攻撃を受ける危険があることから、「多くのロヒンギャ難民は安易な帰国は望まず、現在の地域に当面とどまる」と予想。経済成長により労働力不足のバングラデシュで、ロヒンギャが低賃金労働者の需要を満たし、次第に、周辺のコミュニティーに吸収される可能性があると語った。