聖心女子大学でロヒンギャ問題の緊急連続シンポジウム

ロヒンギャ難民の問題が発生した背景や難民のミャンマー帰還に関する見通しなどを多角的な視点から検討する緊急連続シンポジウムが12月5日、同8日に、東京・渋谷区で開催された。主催は聖心女子大学グローバル共生研究所。両日とも200人を超える学生やNGO関係者、宗教者らが参加した。

ロヒンギャとは、ミャンマー・ラカイン州に居住するムスリム(イスラーム教徒)の少数民族。軍事政権下で国籍を剝奪されるなど、さまざまな人権侵害や差別を受け、過去にも膨大な数の難民が発生してきた。今年8月25日、ロヒンギャの反政府武装組織による警察機関への襲撃事件を受け、国軍がテロリストの掃討作戦を展開。これにより、60万人を超えるロヒンギャが国境を越えて隣国のバングラデシュに押し寄せた。11月末、両国政府がロヒンギャの本国帰還に合意したとメディアは報じたが、難民の流出は続いている。

連続シンポジウムでは、難民支援やロヒンギャ問題に詳しい専門家8人が登壇し、問題提起や提言を行った。

この中で、ミャンマーの現状に精通する弁護士の渡邊彰悟氏は、アウンサンスーチー国家顧問率いる民主化勢力「国民民主連盟」(NLD)が政権を握ったものの、現行の憲法では、議席の25%は国防大臣が指名する軍人でなければならないなど、「国軍が依然として超越的な権力を持つ」と指摘。ロヒンギャの難民化が国際的な批判を集める一方で、国籍を与えられている少数民族と国軍の間でも紛争が常態化していると述べ、「国軍は、他の少数民族との紛争を覆い隠し、NLDに対する少数民族の期待をそぐ目的でロヒンギャを利用している」との見解を示した。

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