TKWO――音楽とともにある人生♪ ティンパニ・坂本雄希さん Vol.1

日本トップレベルの吹奏楽団として知られる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)。演奏会をはじめ、ラジオやテレビ出演など、多方面で活躍する。長年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲の参考演奏を行っていることから、特にコンクールを目指す中学生・高校生の憧れの存在でもある。今回は、ティンパニ奏者の坂本雄希さん。ティンパニという楽器の魅力やこだわりについて聞いた。

存在感のあるティンパニの音色

――ティンパニとは、どのような楽器ですか?

ティンパニは、アラブ地域の軍楽隊で合図を送るために使われていた太鼓「ナッカーラ」が起源といわれています。馬の胴の両脇に取り付けて鳴らすその太鼓が、13世紀ごろにヨーロッパに伝わったようですね。

その名残が、楽器の並べ方(セットアップ)に表れています。私はドイツ式セットアップで演奏するのですが、これは、奏者の右側にいくほど低い音が鳴るように楽器を並べます。この並べ方は、人が右足を上げて馬にまたがる時、邪魔にならないように馬の左側に小さな太鼓を配置したのが由来という説があります。楽器は日々、進化する一方で、昔から変わらず残っている部分もあるというのは、面白いですよね。

――坂本さんにとってティンパニの魅力とは?

ティンパニは、詳しくは「膜質打楽器」(スネアドラム、コンガ、和太鼓など)に分類されるのですが、その中でも音程を持つという珍しい楽器なので、リズムをリードする役割はもちろん、他の楽器とのアンサンブル(合奏)でハーモニーをつくれる点が一番の魅力ですね。フルートやクラリネットのように音数は多くないので、メロディーを奏でることはありませんが、ティンパニの音色には存在感があります。作曲家によって効果的に用いられていることが多く、演奏の躍動感、疾走感といった“曲の流れ”を生み出す大事な役割があると思います。

――重要な役割だからこそ、楽団の演奏に与える影響は大きいのですね

はい。ティンパニの演奏を指導してくれた先生から、「ティンパニはタイミングだけでオーケストラの音色を変えられる」と教わり、この言葉を今も大切にしています。ティンパニが速めに音を出すと、楽団全体のサウンドが引き締まり、ソリッド(硬質)な印象になる。逆に遅く響かせると、柔らかな印象になるというのです。これは、プロの演奏家の感覚的な話ですから、一般の方が聴く分にはあまり分からないかもしれません。本当に、ごくわずかな違いです。ただ、そのわずかな違いによってオーケストラ全体の音色を変える力があるので、常に全体のサウンドに注意を払いながら、自分の役割を意識して演奏しています。

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