TKWO――音楽とともにある人生♪ バリトンサクソフォン・栃尾克樹さん Vol.2
栃尾克樹さんがTKWOに入団したのは40歳の時。それまで、経済的に厳しい時期も、奏者以外の職業を考えたことはなく、「奏者として生き続けることは、息をすることやご飯を食べることと一緒」との考えから、音楽の道をただひたすらに歩み続けてきた。今回は、昨年まで10年間務めた楽団でのもう一つの“顔”――インスペクターについて聞いた。
働きやすい職場づくりを
――2009年から10年間、TKWOのインスペクター(インペク)を担っていましたが、これはどういう役割ですか
演奏面で楽団員をまとめるのは、コンサートマスターの仕事です。インペクの仕事は、演奏面以外の部分でのまとめ役です。普段の練習・本番の時間管理、地方公演に行く際の交通手段や宿泊先の選考、休日管理、環境整備など、働きやすい職場をつくるために、事務所のスタッフと相談します。楽団員からの意見を吸い上げて事務所に伝え、事務所の意向を楽団員に伝えます。板挟みでつらい役で、よく言うと潤滑油的な存在ですかね(笑)。
具体的な仕事としては、例えば、楽団員の休日について調整します。一つの演奏会で、サクソフォンパートの4人が全員休んでしまうことがないようにしつつ、全員が公平に有給休暇を取れる方法を考えることもします。
佼成ウインドの事務所は、演奏会やクリニックなどの仕事を懸命に取ってきます。その際に、なるべく多くの楽団員が出て、来場者の方に顔を覚えてもらえる機会にしたいと考えます。一方で、全部の演奏会に出演するとなると、楽団員は奏者として、また、働いている人としても、縛られ、身動きがとれなくなってしまいます。もちろん、楽団員の中に演奏を休みたいと思って所属している人は誰一人いません。ですが、ハードなスケジュールが続く、また、どうしても外せない音楽の仕事があるという楽団員もいますから、事務所側の意向を踏まえ、楽団員の思いもくみながら、インスペクターが良いバランスを図って各楽団員の休みの取り方のルールを考えます。
――インスペクターはどのように決まるのですか
コンサートマスター、企画委員と同様に、インスペクターも2年ごとに選挙で決まります。ちなみに、副コンサートマスターは、コンサートマスターの指名です。どの役も立候補は選挙の1カ月前に募ることになっていますが、自ら名乗り出る人はいません。基本的に互選ですね。僕が務めた10年間のうちに5回の選挙が行われましたが、一度も立候補をしたことはありません。一回なってしまうと、「あいつにやらせておけばいい」みたいになってしまうんですよね(笑)。
僕が決まった2009年は、前任の牧野正純さん(フルート奏者)がもうすぐ定年なので、自分がいるうちに世代交代をしたいということで、新たな人を決めることになったのです。その選挙で僕が選ばれました。それから10年が経ち、最近、武蔵野音楽大学の講師としても忙しくなってきたので、僕も世代交代をしたいと思い、降りることにしました。今年から、堀風翔君(ホルン奏者)がインペクを務めています。