TKWO――音楽とともにある人生♪ コントラバス・前田芳彰さん Vol.1

日本トップレベルの吹奏楽団として知られる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)。演奏会をはじめ、ラジオやテレビ出演など、多方面で活躍する。長年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲の参考演奏を行っており、特にコンクールを目指す中学生・高校生の憧れの存在でもある。今回は、TKWOのメンバーで唯一の弦楽器を担うコントラバス奏者の前田芳彰さん。管弦楽団に所属していた経歴もある前田さんに、コントラバスの特徴や役割、さらに楽器との出合いや音楽の道に進んだきっかけなどを聞いた。

佼成ウインドで唯一の弦楽器奏者

――コントラバスが楽団で担う役割、その魅力を教えてください

コントラバスは合奏の時、他の楽器の音色を低音で支えながら、全体のハーモニーに広がりや深みを与える役割を果たします。温かで、他の楽器を包み込んでいくような響きが大きな魅力です。ただ、僕は、ソロ楽器としての一面も大好きです。特に気に入っているのは、とても甘美な音色を奏でる高音部分。管楽器に比べて、コントラバスは音量が小さいので、この繊細な響きは、ソロや小編成の演奏会などでじっくり味わって頂ければと思います。

――弦楽器が主体の管弦楽団と、管楽器が主体となると吹奏楽団では、それぞれの演奏スタイルに違いはありますか?

僕はかつて管弦楽団に所属していましたが、管弦楽団であれ、吹奏楽団であれ、その形態によって演奏に取り組む姿勢が変わることはありません。演奏においては、作者が曲に込めた意図を、奏者が譜面から読み取って、正しく表現することが大切です。これを基準にして、今の音で合っているか、楽団全体の音楽表現の中で自分の演奏は突出していないか、あるいは存在が埋没していないかといったことに注意を払いながら、全体のバランスを考えて演奏しています。

ですから、例えば、「交響曲の大家」として知られるマーラー(グスタフ・マーラー)の作品を管弦楽団で演奏する場合も、「吹奏楽の神様」と称されるリード(アルフレッド・リード)の作品を吹奏楽団で披露する時も、作曲家が譜面に込めたものを最適な音色で表現するという心がけに変わりはないということです。

ただし、管弦楽団と吹奏楽団では、構成人数が違うので、求められる役割は違ってきます。管弦楽団のコントラバスパートは4人から8人、多い時は10人で担います。コントラバスのパートを一つの楽器に見立て、数人で豊かな音色をつくり上げるのは、管弦楽団ならではの楽しみですね。大人数で演奏する安心感もあります。一方、吹奏楽団である佼成ウインドのコントラバスパートは1人から2人。ステージでは、他の管楽器の音色に溶け込むように合わせて、合奏の低音部分に厚みを出したり、リズムを刻む音色をクリアに聞こえるように支えたりといった役割を担います。

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