TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・原浩介さん Vol.3
それぞれの音域に、こだわりを持って
――関口先生に教えてもらったことで今も生きていることはありますか?
“ゆっくり”“謙虚に”“丁寧に”の三つの言葉です。
「ゆっくり」とは、「ゆっくり楽譜をさらって、演奏はそんなに焦らなくていいんだよ。焦らずに、地道に音楽と向き合い続けることが大切なんだ」と教えられました。「謙虚に」とは、「調子に乗らずに、常に謙虚に音楽に向き合う」ということ。「丁寧に」とは、「演奏もそうだけど、練習も丁寧に」ということです。そして、「人との接し方も丁寧に」と、口酸っぱく言われました。この三つは、今でも自分の中に生きている言葉です。
――吹奏楽に励む中高生にメッセージを
やっぱり、僕の師匠・関口先生の言葉をそのまま伝えたい。「ゆっくり、謙虚に、丁寧に」。それを意識して、演奏に取り組んでほしいなと思います。
また、クラリネットを演奏している子に向けては、“超”具体的な目標となる音を見つけてくださいと言いたいですね。「このプレイヤーの、この音域の、この『ド』の音がいい!」とか「この演奏家が奏でる、この部分は擦り切れるまで聴いています!!」という具合に、です。自分で、「この音」というこだわりを持ってほしいですね。
クラリネットとは、幅広い音域を奏でる楽器です。「シャリュモー(低音域)」「ブリッジ(クラリオンの橋渡し)」「クラリオン(中音域)」「アルティッシモ(超高音域)」と、音域によって名称が付けられているほどで、それぞれの音域によって音の表情が変わります。人によって音の個性もあり、人の個性と音域の性質が絡み合って複雑になります。ですから、「このプレイヤーの、この音域」とこだわりが出てくるのです。
学生時代の僕は、さまざまなソロ奏者のCDを何度も何度も聴いて、自分が理想とする音があると、その音はこの奏者のように吹きたいと目標を持って練習していました。こだわりとは、意識することですから、練習への意識が変わってくるのです。
部活での練習も大切ですが、そこだけで自分の音をイメージしているようでは、なかなか上達はしません。より高みを目指して、「目標とする音を探す努力」をしてみてください。
僕たちが取り組んでいる音楽とは、目に見えないものです。手本を目の前に置いて、それを見たまま、まねるものではありませんし、数式のように正確な答えもありません。自分の中で、こんな音を出したい、こんなふうに吹きたいという明確な“音”をつかむことが大事なのです。
そしてもう一つ。今、自分が仲間と共に響かせている音楽と、仲間を大事にしてください。一つのコンクールに向けて、熱く取り組む。その時の苦しさと楽しさは、学生の時にしか味わえないものですし、だからこそ響く音があります。プロになって、あの頃の音の響きをつくろうと思っても僕たちにはもうできません。それを楽しんで、音楽と、仲間と向き合ってほしいと思っています。
プロフィル
はら・こうすけ 1989年、神奈川・横浜市生まれ。昭和音楽大学大学院修士課程を学長賞を受賞して修了した。S・マカリスター氏作曲のクラリネット協奏曲(フリーバーズ=日本初演)、アーティ・ショウ(クラリネット協奏曲=吹奏楽新校訂版日本初演)を昭和ウインド・シンフォニーと協演、いずれも国内レーベルCAFUAレコードよりCDがリリースされている。2014年にTKWOに入団。TKWOのメンバーで構成された木管五重奏ユニット「東京ELEMENTS」でも活動している。