TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・小倉清澄さん Vol.1

日本トップレベルの吹奏楽団として知られる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)。演奏会をはじめ、ラジオやテレビ出演など、多方面で活躍する。また長年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲の参考演奏を行っていることから、特にコンクールを目指す中学生・高校生の憧れの存在でもある。今回は、クラリネットの小倉清澄さんが登場。楽器の魅力、演奏で意識していることなどについて聞いた。

演奏中は以心伝心!

――クラリネットの魅力とは?

まず、クラリネットの音域は約4オクターブで、管楽器の中で音域が最も広いことが挙げられます。一つの音階を奏でるのに、いくつかの演奏の仕方があるのも特徴ですね。具体的に言うと、一つの音階に対して、キー(穴)の押さえ方が複数あるのです。これによって、同じ音階でも、違った音色を奏でることができるので、表現の幅が広いことも魅力です。

楽器そのものではないのですが、楽団の中で、クラリネットパートならではの魅力というのもあります。僕はクラリネット(B♭クラリネット)を担当していますが、これにアルトクラリネット、バスクラリネットなどを加えたクラリネット属の楽器は、吹奏楽団の中で一番人数が多いパートで、全体の4分の1から5分の1を占めます。そのため、演奏中に同じ楽器の奏者同士で、互いの演奏を聴きながら意思の疎通を図って、バランスを保っていくこともクラリネットならではの面白みですね。

例えば、実際のコンサートでは、リズムや音の重なりといった部分で、ほんのわずかな演奏の乱れのようなものが生じる時があります。観客はもちろん、他の楽器の奏者でも分からないような、わずかなことです。でも、同じパートのメンバーは、そのわずかな乱れに気づきますから、すぐに直したくなるのですが、言葉で伝えることはできませんから、どこで、どうしたら、本来の気持ちの良い演奏に戻すことができるかを、互いに「気」を察して、音や雰囲気で感じ取ることが求められます。これは、まるでテレパシーのような交信で、それぞれが演奏家として培ってきたものを総動員して、他の奏者が次にどのような音を出すのかを想像し、2秒後ぐらいの未来を想定して演奏するんです。こうした小さなピンチを、皆の気転で乗り越えて、全体の演奏がうまくいった時の高揚感というのは、合奏ならでは、クラリネットならではの醍醐味(だいごみ)と言えますね。

――楽器を演奏する時、一番大事にしていることは何ですか?

人が日常の中で自然にとる動作、それと同じように楽器を演奏しようと常に心がけています。楽器は音を出す道具ですから、上手に操って思い通りの音色を出さなければなりません。楽器に息を吹き込む動作なら、例えば、ケーキに立つろうそくの火を吹き消すようなイメージと言えばいいでしょうか。

フーッと息を吐き出す時、体が緩やかな前傾姿勢になりますが、これが自然な体の使い方です。風船を膨らませる時、大きく深呼吸をするように体を反らせて息を吹き込む人はいないでしょう? いい音が出ないと思うと、人は考え過ぎて普段とは違うことをしようとして、かえって不自然な体の使い方をしたり、変に力を入れてしまったりしがちですが、そうした時こそ、日常生活における「自然体」を思い出して、シンプルに考えることが、まずは大事だと思います。

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