TKWO――音楽とともにある人生♪ テューバ・小倉貞行さん Vol.1
日本トップレベルの吹奏楽団として知られる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)。演奏会をはじめ、ラジオやテレビ出演など、多方面で活躍する。また長年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲の参考演奏を行っていることから、特にコンクールを目指す中学生・高校生の憧れの存在でもある。時に彼らの演奏指導にも取り組んでいる。本企画の第2回はテューバ(チューバ)奏者の小倉貞行さん。たまたま入った中学の吹奏楽部から始まった音楽人生や、衝撃を受けた演奏家との出会いなどを聞いた。
姉と同じ部活は嫌だったのに……
――音楽を始めたきっかけは
中学生になり、吹奏楽部に入部したことですね。2歳上の姉が中学の吹奏楽部でクラリネットを吹いていたので、姉と同じ部活に入るのは絶対に嫌だと思い、最初は運動部に入ろうと考えていました。それなのに、吹奏楽部の見学に行き、新入部員が少なかったため、嫌な気持ちがありながらも入部していました。楽器は、〈やるなら大きなものがいい〉というぐらいの思いでテューバを選び、それから48年間、ずっとテューバを吹いています。
――プロの奏者を目指すようになったのはいつ頃ですか
最初にプロを意識したのは、高校に入ってすぐでした。第一志望の高校に入学できず、〈世の中には頭のいい人がたくさんいるんだな〉と感じた時、音楽大学(音大)に行きたいという思いが湧いたのです。もう一つの理由として、実家の酒屋を継ぎたくなかったということもありました。長男の私に酒屋を継がせたいと考えていた父親からは、「プロになんかなれるわけがない」と強く反対されました。それで、かえって何としてでもプロになろうと。意地があり、それがプロを目指す上で良かったのかもしれません。
高校では、通学時間が長く掛かり、加えて、音大を受験するために必要な勉強をしたいとの考えもあって、吹奏楽部には入らず、楽譜の読み書きに必要な基礎となる楽典の勉強やピアノの練習、聴音のレッスンを受けることにしました。ちょうど、この頃はテューバの演奏を収録したレコードをたくさん聴いていましたね。その中で、一人の奏者の演奏に衝撃を受けました。テューバソリストのロジャー・ボボさんです。ボボさんは「自分はソリストでいく」と、それまで所属していたオーケストラの楽団を辞めた方で、ソロ演奏に秀でていて、私はこの時から〈いつかボボさんに師事したい〉と思うようになりました。