発達障害・発達凸凹――当事者からのメッセージ 広野ゆい・NPO法人DDAC代表

人間は、人間によって回復する

私は28歳でうつ病と診断されたときに、『片づけられない女たち』(WAVE出版)という本に出会いました。その本を読んで、自分はADHD(注意欠陥・多動性障害)だと理解したのです。

私は自分の発達障害を受容できるようになるまでに、5年の月日が掛かりました。初めは、これまで悩んできた原因が分かったので、治るかもしれないと思いました。「普通の人になりたい」と強く思い、さまざまなことに挑戦しましたが、普通の人には一向になれません。そんな時に自分と同じようなことで悩む人たちに出会い、一人じゃないと感じました。悩みを共有し、失敗さえ共に笑い合える仲間と過ごすうちに、自分を肯定できるようになれたのです。

2005年に「発達障害者支援法」が施行され、日本で「発達障害」という言葉が普及しました。DDAC(発達障害をもつ大人の会)では、2010年から4年間、大阪府との協働で就労支援事業を行っていました。

私は相談者に、「発達障害があっても大丈夫」と伝えています。仲間が周りにいますし、みんなできないことがあっても、毎日、楽しく生きられるようになりました。私は、今は発達障害があってよかったと思えるようになりました。それは、障害があることによって、見える世界があり、できる体験があり、出会えた人々がいるからです。

私は否定されない安全な場所を得て、人間というのは、人間によって回復するのだと実感しました。これからも、発達障害を持っている人たちが安心できる場づくりに尽力したいと思います。一人ひとりが尊重されて、全ての人が生きやすい社会になる未来を目指して。

(2月18日、大阪普門館での教育者教育研究集会の席上、『発達障害・発達凸凹――当事者からのメッセージ』をテーマに行われた講演から)

プロフィル

ひろの・ゆい 1972年生まれ、青山学院大学卒。NPO法人「DDAC(発達障害をもつ大人の会)」代表。NHK・Eテレ「ハートネットTV」、「バリバラ」などテレビ出演多数。

 

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