発達障害・発達凸凹――当事者からのメッセージ 広野ゆい・NPO法人DDAC代表

発達障害の当事者としてメッセージを発信するDDAC代表の広野ゆい氏

周囲に理解してもらえない苦しさ

さらに、発達障害の人は感覚が過敏で、見え方や聞こえ方のほか、味覚や触感などが普通の人とは違います。

例えば、聴覚では、聞くべき音とそうでない音を聞き分けることができず、全ての音を同じ刺激で受け取ってしまいます。学校で先生の話を聞かなければいけないと分かっていても、校庭にいる子供たちの声や道路を走る救急車のサイレンの音が耳に入ってきてしまい、先生の声が聞こえないのです。普通の人は、先生の声だけが自然と大きく聞こえ、あとの音は雑音として音量を抑える機能がありますが、私たちにはありません。先生の話が分からずに、一日中授業を受けることは、拷問のように感じます。

発達障害のある人たちは我慢ができないわけではありません。いろいろな刺激を過剰に受けてしまい、すでに頑張っている状態のため、これ以上受け付けることができないのです。

周囲に理解されずに、特性に合った支援を受けることができないまま育った大人の中には、子供の頃に「何でできないの」と何度も責められてきた体験を持っている人が少なくありません。しかし、責められても、本人にはどうしてできないのか、どうして怒られているのか理解することができないのです。周囲に非難されることが続くと、「みんなに迷惑をかけるダメな私なんだ。迷惑をかけないためにはどうしたらいい? 私がいなくなればいい?」と自分を責め、気がつくとうつ病やパニック障害、摂食障害やリストカットなどの依存症に陥ってしまうことがとても多くあります。

障害は自分でコントロールできる範囲を超えています。本人にはどうにもならないのです。「できるのに、やらない」のではなく、「やりたくても、できない」ことを理解してほしいと思います。

怒るのではなく、「よく頑張っているね」と褒めてあげてくださいませんか。褒められるとエネルギーが出て、可能性が広がります。周囲の方々には、当事者に寄り添い、その人のタイプを知って、伝え方や接し方など相手に合わせて支援してほしいと願っています。

 

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