カンボジアの農村を支えて JVCカンボジア代表・大村真理子氏

村の農産物を使って食品加工の方法を学ぶ女性たち(写真提供・JVC)

森林の再生には時間がかかるので、大人と子供が一緒に環境保全に取り組みながら、次世代に森を残す大切さを伝える環境教育を行っています。具体的には、地元の小学校に通う児童が村の長老から、自然が豊かだった当時の村の様子や人々の暮らしについて話を聞き、後に地域の共有林を訪問します。自然の中に身を置き、森林管理委員会の人から、森林の伐採がもたらす生態系の変化、そして森を守る活動の重要性を聞いた上で、自らの手で植樹作業を行います。それを通して自然資源を再生し、適切な管理を行いながら、農家が年間を通して食料を増産できるような、持続可能な環境をつくり上げていくのです。

実際にこの活動に参加した小学5年生のロン・チョンパーさんは、「木の種類をたくさん教わりました。植えた木が大きくなったら、その下で本を読んでみたい」とうれしそうに話してくれました。また、小学校のパエン・ツコーン先生は、「子供たちが楽しそうに、植えた木の成長を想像している様子を目にすると、うれしくなります」と語ってくれました。

私たちJVCは、「足りないものをあげるのではなく、つくる方法を一緒に考える」ということを活動方針にし、大切にしていますが、人々の喜びの声を聞くと、私自身、本当にうれしく思います。

近頃は、カンボジアの年配の方々から、「子や孫の世代に生きる希望が持てる未来を残したい」と言われる機会が多くあります。しかし、そうした声が果たして反映されるのか――不安視される情勢が現地で生まれています。

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