カンボジアの農村を支えて JVCカンボジア代表・大村真理子氏

JVCによる農村での栄養価に関する研修(写真提供・JVC)

このほか、収入が不安定な中で病気になり、治療費の支払いができずに家や土地を担保に借金をする人が増加するなど、人々の暮らしは次第に貨幣経済の負の部分にのみ込まれていきます。出稼ぎによる収入以上に支出が増え、赤字家計の農家を多数生み出してしまったのです。

そこでJVCでは、農村生活の安定には、少ない労働力でも、狭い土地でも生産して暮らしていける農業への転換が不可欠と考え、二つの支援活動を推進しています。

一つは農業を強化する活動です。食料品購入に必要な支出を抑え、健康維持に必要な栄養を確保する観点から、乾季や雨季を問わず栽培が容易で、葉の部分の栄養価が高い野菜のチャヤやモリンガ、アマメシバといった多年生食用樹の家庭栽培の普及に努めています。さらに、食物から摂取する栄養価や体への効能について楽しみながら学ぶ試みとして、料理コンテストも兼ねて調理実習を各村で開催しました。先の3種類の野菜の調理方法を伝え、村人自身が調理と試食を行います。他の村の料理を写真に撮り、それを見ながら参加者同士で話し合い、栽培促進にもつなげています。

この活動の中では、家庭や市場で余った野菜、果物を長期保存する食品加工の実習も行いました。これまで、加工食品を市場で購入していた家庭でも、ライムの酢漬けをはじめ20種類以上の加工品を作ることができると好評です。

研修を受けた家庭で行われている食品加工。家計の安定につながっている(写真提供・JVC)

食品加工の研修をすでに5回以上受けたフル・ヌゴーさん(50)は、「家庭で作ると塩加減などが調整できて健康的なことが分かり、栄養価への関心も高まりました。家庭で使う分以外は販売に回して収入にもなり、うれしい」と語ってくれました。

もう一つの支援は、地域の自然を守る活動です。樹木の実を採取して生活する人も多くいるため、森林伐採は家計にとって大打撃となります。

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