核兵器全面的廃絶のために NPO法人「ガイア・イニアシアティブ」代表・野中ともよ氏

核兵器禁止条約が7月7日に国連で採択され、9月20日には、署名式が行われました。

「核兵器は、禁止しようよ」。世界でそうなるまでの道のりがどんなに大変だったことか。さまざまな立場の違いを超えて、力強く訴えてきた方々の努力で、核兵器禁止条約が採択されました。対立の構造に負けていたら、この日を迎えられなかったと思います。

現在、世界では国力が豊かな、核を持っている国と、持っていない国が対立しています。非保有国が「ダメだ。持っているやつはやめろよ」と言い、保有国は「おまえら、持ってないんだから、オレにつけよ」と言って争っているわけです。この対立軸の先に、核の問題を解く鍵はないと思います。

この対立を見ていると、アインシュタインの「問題を引き起こした意識と同じレベルのままでは、その問題を解決できない」という言葉が思い出されます。兵器の保有、とりわけ核兵器を保持しているか、していないかに論点を置いて議論しても、核を持っている国の方が強いと思っている人たちの考えはいつまでたっても変わりません。今、こんな対立をしている場合ではないのです。

私たち人類がお世話になっている地球の現在の状態は、危機的です。核兵器、また核にまつわる原発も重要な問題ですが、大量生産、大量消費で競争を繰り広げ、お金もうけのことばかり考えてきたことで、地球環境が大変になっています。それに伴い、先進国と開発途上国の間で格差ができ、開発途上国に大きな被害がもたらされています。

こんな構造ができてしまったのは、なぜでしょうか。それは、お金を第一に追い求め、世界各国で競争を繰り広げてきたからです。再び、経済的利益を第一に追求していくとどうなるでしょう。転換点である今こそ行動する時です。

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