生み出す力の見つけ方 デザイナー、タレント・ドン小西氏

人生は山あり、谷あり。人間って大変ですよね。僕はデザイナーとして独立した当時、とにかくがむしゃらに働いていました。服を作って展示会を開くのだけれど、お金がない。

そこで何をしたかというと、いろいろな生地屋を回り、廃棄用の布切れや糸をごみ袋いっぱいにもらってくるんです。中には電球のコードまで入っている。ひもなら何でも喜ぶと思われていたのでしょうね。それで僕は、そういったものを黙々と編んでいきました。すると、素材はカシミヤ、ファンシーヤーンにモヘア、靴ひもや包帯も編み込んで、色の何百種類も入ったセーターが出来上がるのです。

そんなことを何年か続けていたら、「芸術作品を作っているやつがいる」とうわさになりました。一生懸命やっていると、見ていてくれる人がいるのですね。結局、パッチワークの癖がついてしまい、一つの顔になっていったのですが、それから店も従業員もどんどん増えていきました。

ドン小西氏がデザインした文化祭実行委員のTシャツ(写真左)

一時は、テレビをつけるとタレントさんが着ている服は、みんな僕のデザイン。資産は60億にまでなりました。「ついに俺の時代が来た」と思っていたのだけれど、流行の移り変わりとともに、2年半で全部なくなっちゃった。しかも残ったのは19億の借金。けれど、面白いことに、全く落ち込みませんでした。なぜなら、僕には「どこにも負けない世界一の服を作る」という明確な目標があったからです。

テレビ出演の話が来たのは、本当にお金に困っている時でした。テレビに出るとなると、みすぼらしい格好はできないし、自分らしさにさらに磨きをかけるでしょう? すると、出演者のコーディネートも気になって、「全然合ってないよ」とか、「僕だったらこう合わせる」とか勝手なことを言っていたら、それが面白いという話になって、始まったのが「ドン小西のファッションチェック」です。展示会で培った感覚が、後からこんな形で自分の武器になるとは思いませんでした。

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