【大仏師・前田昌宏さん】心を映す仏さま 仏像彫刻教室で心安らぐひとときを
思いを込めて、求める姿を形に
――教室で大切にしていることは?
私たちの仏像彫刻教室は、上手に彫ることが目的ではありません。まずは私が描いた仏さまの絵をヒノキに貼り、その線に沿って必要のない部分を少しずつ削ってもらいます。すると同じ下絵から彫り始めても、出来上がる仏さまは一体一体、表情が違うんです。皆さん、楽しみながら心を込めて彫られているからでしょうか。無邪気で子どものような表情になります。彫っている時のその方の思いや人柄が、自然と仏さまの表情に表れているように感じます。
完成した仏さまは、世界に一つだけの仏さまです。巾着袋に入れて、一緒にお出かけや旅行に連れて行く方もいれば、家の玄関などに飾っている方もいます。中には、ご家族が亡くなられた際に、これまでに彫った仏さまをお棺に入れて送られた方もいます。
また、お子さんやおばあちゃん、お母さんにあげる方もいます。「この間彫った仏像を家族にあげたから、もう一回お地蔵さんを作りたい」と、また教室に来てくださる方もいます。思いを込めて彫った仏さまだからこそ、大切な人に届けたいと思われるのかもしれません。
また、仏さまを彫ることに集中していると、日頃のことを少し忘れて気持ちが落ち着くこともあると思うんです。教室は、皆さんと一緒に手を動かしながら、心を休める時間を共有する場所でもあります。
そのために私は、皆さんが少しでも心を休めて、穏やかな気持ちで過ごせるように、一人ひとりの様子を見ながら声をかけたり、お話を聞いたりしています。仏さまを彫ることを通して、皆さんが自分自身と向き合ったり、安心できる時間を過ごすお手伝いができればうれしいです。

仏像彫刻教室で彫っている仏さま。写真は前田師が彫った見本。
――活動を通して前田さんが伝えたいことは?
仏さまは、本来、目に見えない存在です。しかし私たちは、日常生活の中で五感を通して世界を感じながら生きています。だからこそ、目には見えないものにも自然と姿を求め、形にしたいと思うのではないでしょうか。そのお姿は、親のように私たちを見守り、支えてくれる存在なのだと思います。
教室でも、完成した仏さまに自然と手を合わせる方が多くいらっしゃいます。それは仏さまが単なる「作品」ではなく、特別な存在として受けとめられている証しなのだと思います。そこには、彫った方の思いや優しい心が宿っているようにも感じます。
仏さまは、どんな時も心に寄り添い、支えてくれる存在です。私自身も、手を合わせた時に安らぎや安心を感じてもらえるような仏さまを、これからも彫り続けていきたいと思っています。
プロフィル
まえだ・まさひろ 和歌山県生まれ。浄土宗龍公山親縁寺住職。仏像彫刻の制作・修復に携わり、国内外の寺院へ仏像を奉納している。令和5年、真言宗大覚寺派別格本山延命寺から、尾池泰道名誉住職が大本山大覚寺六十四世門跡を退任する際に「大仏師号」を拝受した。京都、大阪など関西を中心に一般向けの仏像彫刻教室の講師を務める。





