WCRP/RfP国際委 事務総長に就任するカラム氏に聞く 『RfPは私にとって果たすべき「使命」』

豊島教会で会員と交流するカラム氏

世界に必要な「三つの精神」 カラム氏のスピーチ(要旨)

私にとってRfPで役を果たすことは、皆さんが教会に来て、人々のために奉仕するのと同じ意味だと受けとめています。

私は16年間、国連で働いてきました。国連での役割は、政府の代表で構成された、とても大きな組織の中に、いかに宗教的な智慧(ちえ)と経験をくみ入れ、宗教組織と協働するかということでした。国連は世界に奉仕するためにできた組織です。その目的を果たすためには諸宗教の助けが不可欠であり、宗教者同士も互いに協力していくことが重要になります。

しかし、国連で働く中で、あることを感じました。それは、謙虚さが足りないということです。今日、こうして皆さんの信仰に根差したお話を伺っていると、改めて「謙虚さ」「奉仕の精神」「無私の心」の大切さを思い起こされます。今、一番世界に欠けているのは、この三つの精神なのです。

世界の指導者、リーダーたちが語る言葉を思い浮かべてみると、本当に一人ひとりを心配するような視点が欠けていると感じます。世界のリーダーたちは、自己や自国の利益をいかに上げるかといったことばかりに気が向き、それによって私たちの心はざわついています。

政府関係者、国のリーダーたちが忘れている大事なこと――それは人間はいかにして人や社会に奉仕し、貢献するかという、最も根源的な生きる目的のことです。

これは政府だけに言えるものではありません。実は宗教者であるわれわれにとっての落とし穴でもあります。宗教者も放っておけば自身の宗教だけを語り、自らの組織の利益のために行動するようになって、全ての人にとっての“宗教”ということについて語ることを忘れてしまうからです。宗教組織が政府と共に働く意義は、双方が私的な利益のためでなく、公的な利益のためへとシフトしていくことにあります。

私たち宗教者は、政治指導者、経済やメディアのリーダーたちに、大事なことを思い起こさせる役割があります。それは政治やメディア、財界、経済の各界を善悪で判断するのではなく、宗教・信仰が「共通の価値」として大切にしている他者への愛や慈悲を、各界の人々と共有していくことです。

皆さん、想像してみてください。もしも政治やメディア、財界、経済といった各界のリーダーが、愛や慈悲の精神で物事を語り始めたら、この世はどれほどすてきな世界になるでしょうか? 世界は確実に変わっていきます。宗教者はただ黙って座っていて、「あなたたちはこうするべきだ」「こんな生き方をしなさい」と示すだけでは十分ではないのです。

愛や慈悲、こうした心に基づく行動により、人は今までと違う生き方ができるようになります。ですから、私たち宗教者は、自らの姿を通して、世の中にすてきな生き方のモデルを提示し、多くの人々に影響を与えていくことが大切です。

皆さんが今しておられる生き方が、どれほど大事なものであるかを、皆さん自身はまだ、十分に理解していないかもしれません。しかし、互いに助け合い、尽くし合って生きている姿は、自らの人生を良い方向に変えるだけでなく、相手の人生をも、より良い方向へと導くことができます。教会に来て、社会で奉仕する皆さんの姿勢はとても倣うべき生き方だと思います。
(2月1日、豊島教会で行われた「交流プログラム」から)

プロフィル

エジプト出身のイスラーム教徒。オランダ国籍も有する。アムステルダム自由大学で宗教と開発を指導。WCRP/RfP国際委員会を経て国連に入職し、国連人口基金(UNFPA)の文化担当シニアアドバイザーを務める。国連宗教・開発タスクフォースのコーディネーター兼議長として、世界600以上の宗教組織で構成する「人口と開発のためのグローバルインターフェイスネットワーク」と協力関係を構築。昨年のWCRP/RfPの第10回世界大会で、事務総長に選出された。米国滞在の手続き完了後、就任する。