【アトリエエム株式会社代表取締役・三木啓子さん】パワハラへの取り組みを 企業文化育むチャンスに
パワハラは人権侵害 正しい理解を持って
――企業が取るべき対策とは?
まずは被害者が声を上げやすい環境を整えるために、企業のトップが「パワハラは許しません」と宣言することです。
パワハラの被害者は、上司との力関係に屈してしまうケースが多いので、トップが「パワハラは許さない」という姿勢を強く示すことで、被害者が声を発しやすくなります。加えて、その宣言通りに企業がパワハラ問題と向き合っているかを、従業員が監視していくという会社全体の取り組みが大切です。
当然、全社員がパワハラについて正しく理解する研修は欠かせません。研修が重要なのは、「パワハラが人権侵害である」という認識が不足しているが故に、被害者が人権を侵されているにもかかわらず、当事者も周囲の人も声を上げられない状況があるからなのです。
時々、「パワハラをする上司がいるのですが、彼(彼女)は業績を上げているから、彼(彼女)の行為を誰も問題として指摘できない」という声を聞くことがあります。冷静に考えてもらいたいのですが、仮に業績を上げている人であっても、その成果の裏で他人の人権が侵害されている状況があるのであれば、評価を考え直す必要があります。
メンタルヘルス不調を招く危険性の高いパワハラは、人材を育成する上で大きなリスクと言えます。貴重な人材をつぶしているのですから、企業に大きな損失を与えているのです。そのリスクを取り除けない経営陣や管理職は本来、管理能力を問われてしかるべきでしょう。いくら業績を上げていても、人権を侵害する行為に及んでいる人を、「仕事ができる人」とは評価できないはずです。
ですから、「パワハラが人権侵害である」という認識を、研修を重ねて全社員が深めると同時に、パワハラ的な指導を行う上司に対して、「それ、パワハラです」と指摘できる従業員が少しずつ組織に増えることが、被害者が孤立しない組織をつくる上でとても重要なのです。