【中央大学理工学部教授・山田正さん】突然起こる自然災害 防災に対する意識の転換を

日頃から災害を意識し、備えることで

――自然災害を未然に防ぐために、どのような視点が大切ですか

防災対策は、やはり長期的視野に立って考えていくべきだと思います。近年、豪雨や台風などの「災害外力」(災害が起きる力)が増加する一方、堤防などのインフラ整備による「防災力」は、予算減少や老朽化、地域住民の高齢化などによって低下しています。今後の防災対策も、コストや時間、環境面から考えると、インフラで完全に守ろうとする「防災」から、人命第一に被害を減らす「減災」へとシフトしていくでしょう。

そこで、鍵になるのが、私たちの防災に対する意識の転換です。今の住まいは水害が起きやすい場所なのか。避難所はどこにあるのか。気象台や自治体はどんな情報を出すのか。持ち出し袋の中身は何が必要か。何事も行政任せにするのではなく、自ら意識して、行動する必要があります。

また、災害に対する教育を地域や学校でも積極的に進めていくべきでしょう。高校では、誰も見たことのない原子核のことは詳しく教えるのに、自然現象のことは地学でほんの少ししか教えないのが現状です。本格的な教育が必要だと思っています。

河川の氾濫や津波などの自然災害は、時として、私たちの想像をはるかに超える力で襲ってきます。しかし、日頃から防災対策を心がけることで、被害を少なく抑えることはできるはずです。いずれにしても、私たちは「自分の身は自分で守る」という意識を持ち、災害に備える必要があると思っています。

プロフィル

やまだ・ただし 1951年、兵庫県生まれ。工学博士。中央大学大学院理工学研究科修士課程土木工学専攻修了後、防衛大学校や北海道大学の助教授を経て、中央大学理工学部助教授に就任した。92年から現職。国土交通省「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」委員、東京都建設局「東京都地震・津波に伴う水害対策技術検証委員会」委員長などを務める。