【中央大学理工学部教授・山田正さん】突然起こる自然災害 防災に対する意識の転換を

日本の平均気温は、地球全体より高いペースで上昇

――自然災害が多発するのは、やはり地球温暖化の影響が大きいのでしょうか

温暖化と自然災害は、密接な関わりがあるのは事実でしょう。平均気温が上がると大気中の水蒸気量が増し、雨の量も増えます。気象庁の観測によると、日本の平均気温は100年間に約1.2度のペースで上昇しています。地球全体だと約0.7度なので、日本は世界平均よりも高いペースで上昇していることが分かります。しかし、「自然災害は、温暖化問題さえ解決すれば解決する」といった類いの話でもないのです。それには、二つの理由があります。

まず短期間の気象現象を分析した場合、温暖化による影響よりも、海水面温度の変化や、大気の動きなど、自然現象の変化が大きく関係しているためです。

例えば、今年7月には梅雨明け前に酷暑が続き、九州北部では豪雨による甚大な被害が発生しました。一方、8月の関東地方は長雨が続き、昨年の猛暑に比べ、気温は比較的落ち着いていました。これらの気象現象を引き起こした要因として、フィリピン沖の水温が海域によっては平年より1度高くなり、水蒸気量が増え、積乱雲の発達を助長したことが考えられます。

次に、過去の気象観測データの不備が挙げられます。日本の気象観測は、1974年に地域気象観測システム(アメダス)が導入される以前は、全て人の手で観測を行なっていました。そのため、データ量にはどうしても限界があって、日本には過去約50年間分の観測データしか持ち合わせていないのです。これでは、過去200~300年の間にどのような気象サイクルを繰り返してきたのか、はっきりと解明することができません。

しかし、ある文献によると、江戸時代の後半に、大雨と干ばつが繰り返された時期があったことが明記されています。この時の気象データがあれば、現在の気候と酷似していることが確認できるかもしれません。

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