TKWO――音楽とともにある人生♪ パーカッション・和田光世さん Vol.3

2018年に東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)に加わった打楽器奏者の和田光世さん。最終回では、和田さんが演奏者として大切にしていること、楽器を演奏している学生に向けたメッセージを紹介する。

最高の演奏をつなぐ

――正式に楽団員となり、心境の変化はありましたか

常に最高の演奏をつくり上げようとする演奏家としての姿勢に変わりはありませんが、60年の歴史を持つ佼成ウインドの一員として、この楽団を次の時代につなげていくことも考えなければならないと思い、その責任を強く感じるようになりました。私は今、入団して2年目、エキストラ時代を含めると、佼成ウインドで演奏するようになって11年目ですが、その間、続々と若い演奏家が楽団に加わっています。彼らの勢いをつぶさず、大切に生かしながら楽団としてまとまり、心に響く演奏を皆さんにお届けしたいと思っています。

――佼成ウインドで最も印象的な演奏会は?

昨年2月の「第142回定期演奏会」で演奏した「アルプス交響曲」(R・シュトラウス作曲)です。この作品は、アルプス登山の始まりから下山までをイメージしたもので、日の出より前に出発して頂上を目指す登山者の心象、道中で目にした森や小川、滝といった自然の風景を表しています。

練習段階から、指揮者の大植英次さんが思い描く雄大な自然観に、すごみを感じていたのですが、本番のステージでは大植さんの、その世界観にグググッと引き込まれて全神経が研ぎ澄まされ、自分が想像していた以上に音が鳴っている、そんな感じがしました。よく、アスリートが、集中力が極限まで高まると、圧倒的なパフォーマンスを見せることがあると言いますが、それと同じで、素晴らしい演奏を披露できたのではないかと思っています。このような機会は演奏家人生の中でも、めったに訪れることのない場面なので、強烈に印象に残っています。

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