TKWO――音楽とともにある人生♪ ホルン・木村淳さん Vol.1

日本トップレベルの吹奏楽団として知られる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)。演奏会をはじめ、ラジオやテレビ出演など、多方面で活躍する。また長年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲の参考演奏を行っていることから、特にコンクールを目指す中学生・高校生の憧れの存在でもある。本企画の第5回は、ホルン奏者の木村淳さん。今回は、楽器との出合いや、その魅力について聞いた。

出会い、感動、挑戦

――「ホルン奏者・木村さん」の原点は?

小学6年生の時、コンサートに行き、初めてオーケストラの演奏を聴きました。僕の住んでいた金沢市に交響楽団が来て、確か、シューベルトの「未完成」(交響曲第7番)を演奏したのですが、その時のホルンの首席奏者がものすごくうまかった。外国の方だったのですが、その演奏を聴いて、〈ホルンというのは、なんと素晴らしい音がする楽器なんだ〉と子供ながらに感動しました。あまりにも印象が強く残り、その時、演奏してみたいという気持ちが湧いたのです。

家では、父親が音楽好きでレコードや楽譜をたくさん集めていました。当時としては珍しく家にピアノもあり、小学校低学年の頃から無理やりピアノを習わされました。合唱部に入り、地域の少年合唱団にも通わされ、ホルンとの出合い以前にも音楽に触れる環境はあったのです。でも、歌うことはあまり好きではありませんでした。学校の音楽の授業は大嫌いで、成績は悪かったですね。

――オーケストラの演奏を聴いて、音楽嫌いの少年が一変したのですね

そうです。中学校では吹奏楽部に入部しました。ところが、その頃は吹奏楽部にホルンがありませんでしたから、いろいろな楽器を少しずつかじりました。

最初は、木管楽器のクラリネット。金管楽器のバリトンも吹きましたし、ほかには指揮をしたこともあります。演奏ではないのですが、拙いながら編曲に挑んだこともありましたね。コンクールに出るわけではなく、十数人が集まって、音を出して楽しんでいるようなクラブでしたけど。

転機は中学2年生でした。父親にホルンを買ってくれと頼んだのです。中学生に与えるには高い買い物だっただろうと思いますが、「買うなら真面目にやれ」という条件付きで父は承諾してくれたのです。

そこから独学で練習を始めたわけですが、これがもう、全く訳が分からない(笑)。吹いても吹いても、一向に上達しないので、これは誰かに習わなくては駄目だと思いました。

そこで、この時、演奏会のために金沢に来ていた日本人のホルン奏者の方に自分でコンタクトを取り、どうしてもホルンを習いたいと伝えたのです。すると、その方は快く応じてくださり、初めて個人レッスンを受けました。その方の教え方がまた、素晴らしかったのです。以来、ほかの楽器は触らなくなりましたね。

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