立正佼成会 庭野日鑛会長 7月の法話から

全てのいのちをたたえる

「おかげさま」という詩があります。

「おかげさま よろこびもかなしみもうまれたことも死ぬこともみんなみんなおかげさま」

この言葉は以前にも紹介したことがありますが、よく味わいながら読んでいくと、死ぬこともおかげさまです。死ななかったら、大変なことになります。ですから、「みんなおかげさま」という気持ちを大切にしていきたいものです。

また、日蓮宗大本山池上本門寺の貫首であられた酒井日慈さまのお言葉があります。

「花の美しさに序列はない。人間を点数で評価するのはやめよう」

名刺を頂いた時に、その裏に書かれていました。この「花」というのは、もちろん、いのちのことです。花の美しさに序列はない、花はみんな美しい。全てのいのちは尊いということです。

今は、大学へ行ったり、社会に出たりするのに、点数で評価します。人間は点数じゃない、いのちそのものはみんな尊いのだと言われているのです。本当にそうだなと、私は思います。

私たちは、せっかく人間としてのいのちを頂いているのですから、ものを見て、それを賛美する、美しいとたたえる。そういう心が、人のよいところを見ていくことにもつながるのです。

この夏も、「暑い、暑い」と言っていないで、頂いたいのちを有り難いものとして頂戴(ちょうだい)し、賛美したいものです。「素晴らしいいのちを頂きました」「人間として仏さまを拝む、合掌する。そういう気持ちを起こさせて頂きました」、また「感謝します」と。

動物、植物を含めて、人間にしかできない「感謝」というよいところを私たちは頂いています。それを有り難く頂戴し、お互いさまに礼拝行(らいはいぎょう)をしていることに、仏さまから教えて頂く「己をととのえる」という深い意味があると思います。

今月も気温が上がるでしょうが、その中で、不平不満を言わない。自らをととのえていく。そういう気持ちで過ごし、精進していきたいものです。
(7月1日)

充実した人生のために

園浩一布教相談役の体験説法の中に、「一日(ひとひ)暮(ぐ)らし」という言葉がありました。これは、江戸期の臨済禅の高僧、白隠禅師のお師匠さんである正受老人(しょうじゅろうじん)=道鏡慧端(どうきょうえたん)禅師=のお言葉です。

正受老人には、こういうお言葉もあります。

「一大事(いちだいじ)と申(もう)すは、今日(こんにち)只今(ただいま)の心なり。それを疎(おろそ)かにして翌日あることなし」

「一日暮らし」とは、きょうは、自分の一生の中の一日ではなく、きょうの一日が自分の一生涯だという生き方をしなければいけない、明日を思ってはいけないという教えです。

自分の一生の中で一番大事なことは何かと言えば、きょう「只今の心なり」であり、今、自分の心がどんな心であるかを見つめなさいと教えられたのです。きょうの「只今の心」、それを見つめることなくして、また、それを疎かにして、明日の自分はあり得ないということです。
(7月15日)

画・茨木 祥之

先祖の願い

平成5年の3月下旬に、奈良県の天理教本部を訪問し、当時の真柱(しんばしら)さま(中山善衞師)にお会いしまして、お話をさせて頂きました。その前年に私は法燈継承をし、全国の教会をずっとまわりました。

その日、天理教本部を参拝していましたら、雪が降ってきました。「おぢば」(聖地)にも雪が降り込んでくる天候でした。そして、お昼の食事を頂戴した所は、外が見えるガラス張りの場所です。その時は、とてもよいお天気になり、太陽の光がいっぱいでした。天理教には、「陽気(ようき)ぐらし」という教えがあります。その時、朗らか、温かくということが説かれているお話を伺ったのです。

また、きょうは体験説法で「一日暮らし」という言葉が出ました。「いま」「ここ」というものを無きにしては、私たちの人生はありません。一日一日(ひとひひとひ)、一日一日(いちにちいちにち)を大事にして生きていくことが、仏さまの教えの大切なところです。

私たちのご先祖さまからも、いのちを大切にしながら、人生を全うしてほしいと言われていると思います。そのような観点から、「一日暮らし」の意味合いを本当に大切にさせて頂きたいものです。
(7月15日)

お盆を迎える心

お盆を迎えました7月13日の夕方、私と家内は、おがらの迎え火を焚(た)いて、田舎で迎え火の時に歌っていた歌を、小さな声で歌いながら、ご先祖さまをお迎えしました。田舎では、稲の藁(わら)を相当積んで、ぼんぼんと焚いたのが迎え火でした。その時に歌う歌です。

「ほとけたち ほとけたち このあかりについて じいさもばあさも みんなが きなーれ きなーれ」

みんなおいでくださいという優しい歌です。

お盆は、昔はもっと遅く、旧暦の8月だったと思います。「お盆」は秋の季語ですから、私たちが(新潟県)十日町の菅沼にいた時も、お盆は今よりひと月遅れの8月でした。

私は皆さまに、英語の「present(プレゼント)」の話をよくします。過去は「past(パスト)」、未来は「future(フューチャー)」、そして現在は「present」です。私たちは今、一番大事な心の宝である仏さまの教えを頂いて、生かされて生きています。そのことをしっかりと肝に銘じると、いかに大切なプレゼントを今、頂いているか、しみじみと感ずるわけです。

人間として生んで頂いたことに感謝し、父母、またご先祖さまへの感謝を込めて生きていくことを通して、ご先祖さまへの供養にさせて頂きたいと思います。
(7月15日)