立正佼成会 庭野日鑛会長 10月の法話から

画・茨木 祥之

「立正」あってこそ

日蓮ご聖人に「立正安国」という言葉があります。ご承知の方も多いと思いますが、日蓮ご聖人は、時の鎌倉幕府に対して「立正安国論」を唱えられました。

「立正安国」には、正しい教えを樹立する、それによって国を安泰にしていく――そのような意味が込められています。とてもシンプルな四文字の漢字ですけれども、私は、この中に大変素晴らしい精神が込められていると思います。

「立正安国」ですから、国を安泰にすることが目的のようにも受け取れますが、日蓮ご聖人の思いは、「立正」の方にあったともいわれております。

「立正」とは、正しい教えを人間の心の中に打ち立てることです。「立正」が最初にきていますから、一人ひとりの心に法華経という正しい教えがおさまることで、国が安泰になるというのです。「立正」が目的で、「安国」は、それに伴って当然できること――それが、「立正安国」の意味合いであると私は受け取っています。

私たちは、開祖さまのご指導のもと、「立正佼成会」という名称に、同じ「立正」という字を使っています。そして、法華経を所依の経典としています。

私たちもまた、日蓮ご聖人がおっしゃっている「立正」を掲げ、心がけているのですから、法華経の教え、精神というものを、みんなが自分の心に打ち立てることが最も大事な目的である――このように受け取るのです。
(10月15日)