立正佼成会 庭野日鑛会長 8月の法話から

画・茨木 祥之

質直意柔軟に

私は最近、よくこんなことを申し上げています。「氷が解けると、何になるか」と。

皆さんは、「水になる」と思っているのではないでしょうか。暑い日には、氷がすぐに解けて、水になってしまいます。当たり前の答えであり、正解です。

しかし、ただ単に水になるだけではありません。北海道の人たちですと、冬は零下何十度になるわけですから、「氷が解けると、春になる」という答えもあるかもしれません。

そして、仏道を歩む仏教徒の世界では、「氷が解けると、仏になる」という答えが出てくると、もっとよろしいのだそうです。

つまり、人間がいろいろなことで苦しむのは、凡夫(ぼんぷ)――悟っていない人であるからだとされています。凡夫は、自分の我(が)を張って、かたくなに物事を見て、広く、柔軟(にゅうなん)に見ることができません。ちょうど氷のようなコチコチの人間になってしまっているわけです。

その氷が解けるということは、悟るということにもつながります。柔軟に、水のようにサラサラと流れていけるような人間になることが、仏になるということであり、あまり苦しいこともなく、人生を過ごすことができるということです。

「衆生(しゅじょう)本来仏なり 水と氷のごとくにて 水をはなれて氷なく 衆生の外(ほか)に仏なし」という白隠禅師の言葉があります。

凍っていると衆生、解けたら仏。しかし、本来はどちらも皆、水なのだ。それが分からずに、コチコチになってしまっているから、人間は苦しむのだ。こういうことを言っておられます。

法華経は、大乗仏教の中で最も優れたものと教えて頂いています。仏も衆生も、本質的には水です。私たちも、凍りついたままではなく、水のようにいつもサラサラと流れる「質直意柔軟(しちじきいにゅうなん)」な人間になっていくことが、仏道を歩む上においては、とても大事になります。
(8月1日)

未来に良い影響を

私たちの心には、親がいつも「今日は天気がいい」とか、雨が降ると「悪い日だ」と言っていたことが刷り込まれているのだそうです。ですから、私たちが天気に文句を言わないようにし、仏さまの教えを頂いて、「有り難い」と感謝する方向に転換していくことが大事になります。

雨が降ったら大地が湿って、植物が成長できて有り難い。晴れたら、外でいろいろ働けるから有り難い。そのように、良い面を見て、感謝する方向に考えを持っていくのです。それができたならば、私たちの子供や孫、後輩の人たちが「そのように受け取るのか」と認識し、お天気に文句を言わなくなります。

今日から文句を言わない。そして、多くの人たちに感謝することの大切さを説いていくことが大事であると思うのです。
(8月19日)