絵画でめぐる四季 ~山口暁子の世界~ 11月

『菊慈童』

古代中国を舞台にした童子の伝説は、不老不死の祝儀話として日本に伝わり、「菊慈童」の名で能や絵画の題材となりました。私の尊敬する明治時代の画家・菱田春草も、菊慈童の見事な掛軸を描いています。春草はめでたさよりも不老不死の孤独の方に興味を持ったのか、寂しげに佇(たたず)む童が印象的な作品です。私の絵では春草の童を意識しつつも、動植物と共に心穏やかに生きる少女として描きました。

プロフィル

やまぐち・あきこ 1974年、東京都生まれ。97年、東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業。卒業制作でサロン・ド・プランタン賞受賞。99年、同大学院美術研究科絵画科日本画専攻修了。修了制作で紫峰賞受賞。絹に描くという現代の日本画では希少な技法を使って制作を続けている。