絵画でめぐる四季 ~山口暁子の世界~ 9月
『九月姫』
この作品は、イギリスの小説家サマセット・モームが生涯で唯一書いた童話『九月姫とウグイス』の一場面から着想しました。牡丹(ぼたん)は姫の自己愛の象徴、籠から外へと飛び立つウグイスで魂の自由を表しています。『じぶんのしあわせよりも、じぶんのすきなひとのしあわせを、だいいちにかんがえるのは、とても、むずかしいこと』というモームの文章には、大人になった今でも考えさせられるものがあります。
あらすじ 野生のウグイスと仲良くなった九月姫は、独占欲から小鳥を閉じ込めてしまいます。自由を失ったウグイスは瀕死(ひんし)となり、姫は後悔し泣く泣くウグイスを放してやります。他者を尊重する愛を学んだ姫は、その後立派な大人に成長し幸せに暮らしました。
プロフィル
やまぐち・あきこ 1974年、東京都生まれ。97年、東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業。卒業制作でサロン・ド・プランタン賞受賞。99年、同大学院美術研究科絵画科日本画専攻修了。修了制作で紫峰賞受賞。絹に描くという現代の日本画では希少な技法を使って制作を続けている。