ミンダナオに吹く風(3) 文・松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

鳴り響く銃声 そして、かなたに上る煙

今でこそかなり穏やかになったものの、ミンダナオ子ども図書館の活動を始めた2000年以降の10年間は、3年おきぐらいに起こる大きな戦争で、避難民が続発した。それ以外にも毎年のように「リドー」と呼ばれる地域紛争が勃発し、若者たちと一緒に避難民救済に駆け回った。

戦争が起こっている地域に入ると、緑の迷彩色をまとった政府の軍人たちが、ライフルや機関銃を持って歩き回り、ぼくたちの車の横を、戦車や軍用車が走り抜けていく。

それを横目に避難民たちが、家も家畜も田畑も捨てて、水牛に家財道具を引かせて、列をなして移動する風景は、異常だった。見上げると、山の方からは、ドドーーーン、ドドーーンと迫撃砲の音が聞こえてくる。

道沿いや空き地には、いたるところに避難民たちが、避難生活を余儀なくされている。とりわけ子どもたちにとって、ろくな食べものも無い避難生活は、とても厳しい。

ときには、恐ろしさに立ちすくむ場面もあった。避難民たちに、ビニールシートを渡していたときのことだ。突然、背後で迫撃砲の音が鳴り響き、目をやると木陰から、機関銃の音がパラ、パラ、パラと聞こえてきた。

あまりに近い場所だったので、車の荷台の上で思わず身を伏せた。
また、村人に湿原地帯に案内してもらったときには、対岸から、煙が立ち上っているのが見えた。

村長が、かなたの煙を指して言った。

「あれは、ムスリムのゲリラが、政府軍に占領された家に火をつけて、燃やしているんですよ」

そのとき、そちらの方から、パン、パン、パンと銃声が聞こえた。

「危ない! 逃げろ!」

「今の銃器は高性能で、遠方からでも正確に狙いが定められるんだ!」

ぼくたちは、慌ててそこから退避した。

毎年のように避難民の救済を行っていると、ぼく自身がトラウマになっていることも分かった。

毎年2カ月間、子どもたちの支援者を探すために、日本に帰って講演会をしたけれど、湯布院町に呼ばれて行ったときのことだ。突然、自衛隊のヘリコプターが上空を横切った。すると、頭の毛が逆立ち、体が強張った。

「どこで、戦闘が起きているんだ!? 子どもたちを助けに行かなくっちゃ!」

そう思った後、周りを見て我に返った。

「ああ、ここは、平和憲法の生きている日本だった!」

プロフィル

まつい・とも 1953年、東京都生まれ。児童文学者。2003年、フィリピン・ミンダナオ島で、NGO「ミンダナオ子ども図書館」(MCL)を設立。読み語りの活動を中心に、小学校や保育所建設、医療支援、奨学金の付与などを行っている。第3回自由都市・堺 平和貢献賞「奨励賞」を受賞。ミンダナオに関する著書に『手をつなごうよ』(彩流社)、『サンパギータのくびかざり』(今人舎)などがある。