利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(84) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

徳義の連帯

そして、徳義と政治的浄化を中心的論点にして、それに共鳴する政党や政治家が連合・連帯すれば、政治的変革を引き起こすことも決して不可能ではないだろう。今は徳義を政党自体の理念として主張している政党があまりないから、個々の野党の支持率は急上昇しているわけではない。しかし、各社の調査の平均についての分析を見ると、与党が28.1%であるのに対し、裏金問題を積極的に批判して与党に改革を求めている野党(立憲民主党、れいわ新選組、社会民主党、共産党)の支持率の合計は上昇している(16.1%)。逆に、今は裏金問題では政権批判をしているものの、これまで与党批判の姿勢が曖昧だった他の野党(日本維新の会、国民民主党、教育無償化を実現する会)は支持率の合計がやや落ちている(8.3%)。また、比例投票先においては、与党が28.3%であるのに対し、前者は27.8%、後者は17.7%である(3月24日時点、三春充希=はる=第50回衆院選情報部、note「世論の動向【継続更新】」)。従って、前者の4政党が選挙協力を行えば、比例区や小選挙区などで与党を上回ることも夢物語とは言えない。他の政策的論点ではさまざまな相違があるが、政治的浄化を大義として、大同小異を旨とした連帯を行うことが、新しい時代の夜明けへの道だろう。

おごる平家の後に来る新しい政治は?

自民党は、安倍派・二階派の議員80名規模の一斉処分を検討しているという。しかし、党の処分でもっとも重い除名と離党勧告は見送ると伝えられており、不十分だという批判が早くも現れ始めた。自民党内からですら「安倍派幹部の責任は重大だ」として「責任を取るべきだ」という主張が報じられている。まさに「おごる平家」の没落そのものだ。

では、それに代わる「源氏」はどこから現れるのか。この問いを第81回の連載で書いたが、いわば「徳義政治連合」に期待するほかない。宗教的・倫理的観点から見ても、これほど今の日本政治に必要なものはないだろう。源氏にしても、木曽義仲、源頼朝、源義経といったように、当時の英傑たちが力を合わせて、平家を滅亡させた。今の時代、これらに相当する政治家が誰なのかは、まだ判然としない。それでも、徳義を訴える志ある政治家が連帯することによってこそ、このような歴史的ドラマが可能になると思われるのである。

プロフィル

こばやし・まさや 1963年、東京生まれ。東京大学法学部卒。千葉大学大学院人文社会学研究科教授で、専門は政治哲学、公共哲学、比較政治。米・ハーバード大学のマイケル・サンデル教授と親交があり、NHK「ハーバード白熱教室」の解説を務めた。日本での「対話型講義」の第一人者として知られる。著書に『神社と政治』(角川新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう』(文春新書)など。

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