新宗連が「靖国神社の政治利用に対する意見書」を岸田首相に提出

写真右から、自民党組織運動本部長の小渕衆院議員、新宗連の鈴木委員長、力久委員長(新宗連提供)

新日本宗教団体連合会(新宗連)は7月27日、鈴木裕治・新宗連信教の自由委員会委員長(妙智會教団理事)、力久道臣・同政治委員会委員長(善隣教教主)の連名による「靖国神社の政治利用に対する意見書」を岸田文雄首相に提出した。

岸田首相による同神社の例大祭に合わせた内閣総理大臣名での真榊奉納に対するもので、以前は行っていなかった真榊奉納を首相就任後から続けるのは、政治的立場を意識した行為と受け取られかねないと危惧を表した。

新宗連は例年、同意見書を首相宛てに提出してきた。しかし近年、政治的立場を掲げて靖国神社を参拝し、その事実をSNSなどで喧伝(けんでん)する現職国会議員が与野党に見られることを懸念し、昨年からそうした国会議員の所属政党にも意見書を提出している。

27日午前、鈴木委員長と力久委員長が東京・千代田区の自民党本部を訪れ、同党組織運動本部長の小渕優子衆議院議員に意見書を手渡した。立正佼成会から佐原透修・信教の自由委員会委員(本会総務部次長=渉外グループ)が同行した。

意見書では、新宗連として、「戦争犠牲者の慰霊・追悼は国民それぞれが自身の信仰に基づいてなされるべき」との考えを改めて強調。国会議員の「個々の『信教の自由』は基本的人権の根幹として尊重されるべき」としつつも、首相、閣僚を含む国会議員の「政治的立場による靖国神社への関与」は、「特定宗教の『援助・助長』にあたり、政府が、当該宗教は戦争犠牲者の慰霊・追悼において、他の施設などより価値が高い、あるいは『正式』なものであるような評価やイメージ」を国民に与えていると指摘した。

また、こうした行為は、特定の支持者へのアピールなど政治的意図が感じられるとし、「当該宗教が本来大切にしている宗教性への配慮に欠けた行為」にも見えると懸念を表明。「靖国神社に限らず、多数の宗教教団、教会等を政治利用することは、当該宗教の宗教性や信仰心を蔑(ないがし)ろにする行為、集票目的と映りかねません」と憂慮を示した。その上で、政府に対し、「信教の自由」「政教分離」の原則に基づく賢明な判断と行動を要望した。

この後、両委員長は衆議院第一議員会館会議室で国民民主党の玉木雄一郎代表、榛葉賀津也幹事長、古川元久・企業団体委員長と面会。立憲民主党本部で泉健太代表、岡田克也幹事長、白眞勲前参議院議員と会談し、両党の代表に意見書を手交した。

なお、日本維新の会の馬場伸幸代表に宛てた意見書は同日に郵送で提出された。