利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(68) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

画・国井 節

統一的管理システムと全体主義

安倍晋三氏の国葬が終わった。各種世論調査では評価しない人の方が多く、岸田内閣支持率はさらに下落を続けている。やはり、安倍氏関連の人々の「盛者必衰(じょうしゃひっすい)」が始まっているようだ。

現在の焦点は、なお世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題だ。自民党の議員を個別的に応援していただけではなく、自民党の政策にまで影響を及ぼしていたことも明らかになった。その関連団体が、憲法改正や家庭教育支援法の制定に取り組むことを記した推薦確認書を作り、国政選挙の際に自民党の複数の国会議員が署名していたことが報じられたからだ。

ようやく山際大志郎経済再生担当大臣が10月24日に辞任したが、同じように問題視されている衆議院議長や他の閣僚・党幹部は辞任せずに、同じ立場で国会に出席している。宗教法人格剝奪の解散命令をこのカルト的宗教に出すべきだという声は高まっているが、岸田内閣は調査検討の姿勢を見せたものの、解散命令は「慎重に判断」するとしており、政治的・宗教的浄化は進んでいない。

他方で内閣は、今度は健康保険証を2024年秋に廃止してマイナンバーカードに統一する方針を打ち出した。もともと、マイナンバーカードは法律で任意とされていて、政府がポイント付与などを行っても普及率が上がらないので、事実上は強制へと転換することになる。

理由としては利便性が強調されているものの、個人情報の漏えいなどの問題がある。さらに、マイナンバーカードと全預貯金口座との紐(ひも)付けを義務化することを政府が検討したと、この2年の間に報じられている(毎日新聞=2020年5月31日)。こうなると、徴税などのための資産の統一的把握が可能になるが、最大の問題はこれが統一的管理システムへとつながりうることだ。

このようなシステムは全体主義の発想に近い。本連載の66回で、旧統一教会問題と安倍政治が全体主義に類似していると述べたが、現内閣にもこの性格が表れてきた。

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