TKWO――音楽とともにある人生♪ テナートロンボーン・石村源海さん Vol.3
昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、演奏会の中止が続いた。入団1年目だった石村源海さんは、もどかしい思いを経験したが、その中でも楽団員や来場客との関わりから、これまでになく「演奏できる幸せ」を実感したと話す。Vol.3では、トロンボーン奏者として意識していることや、吹奏楽部でトロンボーンを担当する学生へのアドバイスを聞いた。
常に大きな塊として音楽を奏でる
――小学校からトロンボーンを始めて15年になりますが、学生の頃とプロになってからでは意識の変化などはありますか
演奏への臨み方が変わりましたね。高校生までは吹奏楽コンクールに向けて、毎日、本番で演奏する曲を練習し、仕上げていくのですが、その過程で、メンバー同士で「ここのフレーズはこうする」などと相談しながら、全て事細かに決めていきます。そうして、自分たちで決めたことを目標にし、本番で披露できるように完成度を高めていきました。
大学では、半年に一度、定期演奏会があり、それに向けてメンバーと練習します。大事にしていたのは、周りを察する力です。高校のように細かい決まり事をつくるのではなく、練習の場で他の楽器の演奏にアンテナを張って、言葉を交わさずとも耳で瞬時に判断して、自分の奏でる音を調整してハーモニーを仕上げていきます。
佼成ウインドでは、大学での経験を生かしつつ、さらなるレベルアップが必要でした。入団して間もなく、同じトロンボーンセクションの二人の先輩からアドバイスを頂きました。内容は、「僕たち、トロンボーンセクションというのは、トロンボーン、ユーフォニアム、チューバの低音セクションという一つの塊の一ピースだということを忘れないで」というものでした。それまでの僕は、“アンテナを張る”といっても、「自分対指揮者」だったり、「自分対一緒の音の動きをする人」だったり、特定の奏者に対して、一本一本アンテナをつないでいたのです。
先輩のアドバイスは、低音セクションにかかわらず、どのセクションにも言えることです。各奏者が単体としてアンサンブルをするのではなく、オーケストラの中の一ピース、つまり全体の一つという自覚を持って、指揮者とやりとりをすることを教えられました。「自分が」ではなく、常に大きな塊として豊かな音を奏でるという意識ですね。それは僕がこれまで、学生の頃に演奏していた意識とは全く違い、学びになりました。
――自身で特に意識して練習していることはありますか
「癖のない音を目指して、音の粒をそろえること」を意識して練習しています。大学の授業で使っていた練習本に載っている基礎練習を今も続けているのですが、譜面としてはとても簡単なものです。その中で、「音の粒をそろえる」ために、音階や8分音符を規則正しく吹いて、一つ一つの音が偏りなく、伸びたり短くなったりせず、大きくなったり小さくなったりもせず、音程を均一にして全てのクオリティーを高いままそろえる練習をするのです。
それから、一つ一つの音にちゃんと向き合えるかが大切になります。自分の耳で聴いて、どこを改善すればいいのか、毎回その意識を持って練習しています。
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