TKWO――音楽とともにある人生♪ テナートロンボーン・石村源海さん Vol.3

“印”が付いていないトロンボーン 音感を鍛えて

――吹奏楽に励む中学生、高校生にメッセージを

先ほどお話しした「音の粒をそろえる」というのは、僕が大学に入って学んだことなので、中高生にはまだ難しいところもあると思います。トロンボーンの人に特にお伝えしたいのは、「音感を鍛える」ことです。

トロンボーンは楽器の構造上、他の楽器よりも、自分が吹くべき音を正確に表現するのが難しい楽器だと思います。特に最初の頃はそうでしょう。

ピストンやキーによって音を切り替える楽器と違い、トロンボーンは、スライド管をどこまで伸ばして止めると良いか、どこまで引いて止めると良いかで音が決まり、楽器には印が付いていないため、奏者が正確な位置を判断して演奏しなければなりません。自分の感覚だけを頼りに判断し、しかもその作業を連続して、一つ一つ的確に音を出さなくてはいけません。トロンボーンは独特で、「ド」と「ド♯」の間のような中途半端な音も出ます。ですので、さまざまな楽器の初心者が吹いた音の中で、トロンボーンが一番下手に聞こえてしまうことが多いのです。

トロンボーンは、やはり自分でちゃんと今の音は高いのか、低いのか、何の音なのかを明確に理解する「音感」が鍛えられていかないと、扱うのが難しい楽器です。次はこの音を出すという「的」をちゃんと当てながら、それを自然にできるようになることが大切です。

これができないと、例えば、「ドファ」と吹きたいのに、「ドレミファ」と、「ド」から「ファ」にいくまでに他の音が入ってしまいます。楽譜に書かれていない音が出て、曲として成り立ちません。一人が音を外してしまうと、ただちに全体の演奏の乱れになってしまいますから、しっかり練習を重ねることが大切です。

音感を鍛える方法としては、一人で練習する時は、チューナーのメーターを見ながら、正確な音を出すように努め、自分が出した音の高低のズレを分析します。仲間と二人で吹ける時は、相手の音を一つの基準にして、自分の音の高低を調整します。また、複数人でできる時は、周りと和音をつくって、自分の音がその中に溶け込めているかを把握する能力を身につけていきます。

音感を鍛える方法は、この繰り返しです。最初は自分の音の違和感に気づくところからになります。トロンボーンならでは難しさがありますが、頑張ってみてください。

プロフィル

いしむら・よしひろ 1997年、東京・中野区生まれ。2015年、第22回日本トロンボーンコンペティション独奏部門高校生以下の部で第1位となる。20年に東京藝術大学を卒業し、東京佼成ウインドオーケストラに入団。