TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・太田友香さん Vol.2
昭和音楽大学に進学した太田友香さんは、在学中にクラリネット奏者として生きていくことを決めた。今回は、太田さんが東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)に入団した経緯や、プロの音楽家として大切にしている心構えなどを聞いた。
プロだからこそ、いつも観客を意識して謙虚に
――太田さんがTKWOのオーディションを受けたのは、大学4年生の12月でした
ずっと憧れていた楽団でしたし、いつ次のオーディションが開かれるか分からないので、受けないという選択は考えられませんでした。受けるからには入団したいと思う半面、簡単なことではないので、結果はともかく、楽団関係者の記憶に残る演奏をしようと考えていました。
ところが、まさかの合格。驚きしかなくて、現実だと受けとめきれなかった私は、親に報告する時、なかなか言葉が出てこなくて、気が動転して涙がボロボロとあふれてきました。それほど衝撃的な出来事だったのです。ただ、しばらく経っても手放しで喜ぶような心の余裕は生まれませんでした。プロの楽団では、ほとんどの場合、オーディションに合格したプレーヤーは、一定期間を試雇として過ごし、最後に行われる団員の投票で入団の可否が決まります。これは佼成ウインドも同じです。だから私は、〈最後の団員投票で落とされるのではないか〉という不安をずっと抱えていました。
――プロの音楽家として大切にしていることは?
「お客さまの時間を頂いて演奏を披露することへの責任と自覚を持って、音楽と向き合う」。音大(音楽大学)時代の師匠である関口仁先生から教わったことなのですが、これをずっと大切にしています。音楽家は、お客さまからチケット代と時間を頂き、ステージでの演奏を聴いて頂くことで初めて成り立つ職業です。演奏を通して、お客さまへの感謝と敬意を表していくことが音楽家の基本ですから、そのために、ステージでの演奏はもちろん、練習の段階から、演奏会の最後の曲が終わった後のお辞儀まで、聴いてくださる方の気持ちを忘れないように心がけています。
プロとして経験を重ねるほど、音楽家としての「慣れ」が出てきます。それが、ベストな演奏をするための準備を無意識のうちにできるといった形で表れるなら、成長や円熟とも言え、良いことです。でも、お客さまが足を運んでくださること、演奏に拍手を送ってくださることを「当たり前」と思うようになってしまったら、それは、おごり高ぶりでしかありません。自分を駄目にしてしまう「慣れ」は怖いですね。
聴いてくださる方の気持ちを意識していると、熱気を帯びたステージを終えても、冷静になってその日の演奏や立ち居振る舞いを振り返ることができ、謙虚に自分を見つめることができます。そうした意味で、関口先生に教わった言葉は、学生の時よりも、プロとして歩んでいる今の方が、その重みを感じています。