TKWO――音楽とともにある人生♪ オーボエ・宮村和宏さん Vol.1
日本トップレベルの吹奏楽団として知られる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)。演奏会をはじめ、ラジオやテレビ出演など、多方面で活躍する。また長年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲の参考演奏を行っていることから、特にコンクールを目指す中学生・高校生の憧れの存在でもある。今回登場するのは、TKWOの副コンサートマスターで、オーボエ奏者の宮村和宏さん。ギネスブックに「世界で一番難しい木管楽器」と登録されているオーボエについて、宮村さんの“楽器観”を紹介する。
職人技術が求められるリード作り
――オーボエとは、どんな楽器ですか
オーボエの先祖にあたる楽器は、古代メソポタミア文明やエジプト文明の時代に存在していたといわれていますから、オーボエには長い歴史があります。ギリシャ神話には、オーボエの先祖から派生したアウロスという楽器を持った精霊と琴を持った神が音楽合戦をしたという物語もあります。チャルメラや雅楽で使う篳篥(ひちりき)も、さかのぼるとオーボエと同じ祖先にたどり着きます。
現在のオーボエは17世紀ごろ、フランスで生まれました。フランス語では、「オーボア(Hautbois)」と発音します。「オー(haut)」は「高い」、「ボア(bois)」は「木」という意味です。ですから、演奏会でオーボエを紹介する時には、「これは“高木”さんなんです。この会場に高木さんはいますか? 親戚ですよー」と言って笑いを誘おうとするのですが、ウケたことはないですね……。
話がそれましたが、オーボエの特徴は「リード」と言われるくらい、リード(吹き込み口)がとても重要な楽器です。オーボエはファゴットと同じように、2枚のリード(ダブルリード)が組み合わさったものを唇に挟んで息を吹き込み、音を鳴らします。われわれオーボエ奏者には、このリードを自分で作る技術が欠かせません。
リードは、葦(あし)を主に削った木材を、「チューブ」と言われるコルクと金属でできたパイプに糸で巻きつけます。葦はフランス産の「ケーン」という種類のものが使われていて、自分はキログラム単位で輸入しています。
リード製作ですが、まず葦を縦に切り出し、0.5ミリ程度の薄さになるまで内側を専用の鉋(かんな)で削ります。さらに、さまざまな道具を使って、形を整えていきます。
最初に「0.5ミリ程度の薄さに削る」と言いましたが、実は人によって千差万別です。だいたい0.5~0.65ミリぐらいまでの間ですが、0.01ミリ刻みで好みが分かれます。私の基準は0.53ミリです。
リードは鉋のかけ具合で、音色や吹き心地に影響が出てくるので、自分にフィットしたリードを使うためには、自作するしかないのです。オーボエ奏者は、練習をしている時間とリードを作っている時間が、ほぼ同じといわれています。