TKWO――音楽とともにある人生♪ テナー・サクソフォン・松井宏幸さん Vol.2
東京藝術大学に進み、憧れのサクソフォンプレイヤーで、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)の前コンサートマスターである須川展也氏に師事した松井宏幸さん。卒業後も、音楽の道を突き進んだ。今回は、佼成ウインドに入団するまでの歩み、オーディションにまつわるエピソードなどを紹介する。
憧れのプレーヤーを追い続けて
――高校3年の時に決意されたように、大学卒業後もとことん音楽の道を?
大学を卒業し、フリーで活動しながら、サクソフォン四重奏団「カルテット・スピリタス」を結成しました。日本を代表するプロサクソフォンのプレーヤーは、四重奏団で活躍しているイメージがありましたから、それに倣ったのです。
「キャトル・ロゾー・サクソフォン・アンサンブル」には仲田守さん(前TKWOテナー・サクソフォン奏者)、「アルモ・サクソフォーン・クァルテット」には栃尾克樹さん(TKWOバリトン・サクソフォン奏者)。師匠である須川展也先生(前TKWOコンサートマスター)も、田中靖人さん(TKWOアルト・サクソフォン奏者、コンサートマスター)らと「トルヴェール・クァルテット」を組んでいました。憧れの人をまねて、突き進んでいく姿勢は、高校生の頃から変わりません。挑戦することで、演奏者の幅を広げられるとも考えていましたね。
――佼成ウインドへの入団も、憧れのプレーヤーの影響ですか?
もちろんです。目標としてきた須川先生が在籍していた楽団ですし、団員はトップレベルの演奏家しか所属していない“オールスター楽団”なので、チャンスがあるなら入りたいと、ずっと思っていました。ですから、他の楽団のオーディションは受けたことがないんです。
実は、私はこれまでに3回、佼成ウインドのオーディションを受けています。最初は、2003年のバリトン・サクソフォンの時で、栃尾さんが合格しました。次は2013年のアルト・サクソフォンで、林田祐和さんが採用されました。私はどちらも合格できず、2015年には、テナー・サクソフォンのオーディションが開かれることになったので、これも挑戦しようと思ったのですが、オーディションの日に仕事が入っていたので、諦めざるを得ませんでした。頂いた仕事を休んでオーディションを受けることは、プロとしてあってはならないことです。プレーヤーとしての信用を失うことになってしまいますから。でも、この時はさすがに、〈俺は佼成ウインドに縁がないんだ〉とがっくりしました。
ところが、このオーディションは「該当者なし」という結果でした。それから2年後の2017年、再びテナー・サクソフォンのオーディションが開かれて、そこで合格し、ようやく入団することができました。本当に、うれしかったですね。根っからの野球少年が、子供の頃から憧れたプロ野球の球団に入れたような喜びと同じです。
――カルテットではテナー・サクソフォンを担当していますが、アルトやバリトンのオーディションを受けたのですね。楽器がパートによって変わるのは大変では?
合格したテナー・サクソフォンは、私自身、「カルテット・スピリタス」で十数年間演奏してきた楽器でしたし、一番慣れ親しんだ楽器といえます。しかし、フリーで活動していた時から現在に至るまで、ソプラノ、アルト、テナーなど、必要に応じて楽器を持ち替えて演奏しています。佼成ウインドでも、エキストラとして呼ばれていた頃は、アルトやバリトンを演奏させて頂くことが多かったですね。全種類のサクソフォンを持ってレコーディングに出掛けたこともありましたね。私にとって、それぞれのパートの違いは音域が違う程度のことで、運指も同じなので、違和感なく各パートの楽器を演奏することができます。