TKWO――音楽とともにある人生♪ ホルン・小助川大河さん Vol.3
オーケストラから吹奏楽団である東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)へ入団した小助川大河さんは、ホルン奏者としての技能にさらに磨きをかけ、音楽人生に幅を持たせている。最終回では、TKWOにおける小助川さんの役割や演奏家として大事にしていること、吹奏楽に取り組む中高生に向けたメッセージなどを紹介する。
「音楽的な音楽」の素晴らしさ
――情熱的で派手な曲が好みとのことですが?
そうですね、でも、これは、地味で厳かな感じの曲が好きではない、ということでは決してないのです。やはり、どんな音楽も、それ自体が持つ力は、すごいものがあると考えています。
オーケストラでも吹奏楽でも、「ジャンッ!!」と一音を演奏しただけで一気に、その場の空気が変わりますし、聴く人の心にもグッと迫るものがありますから。情熱的な音楽は、特に気分が盛り上がるので好きなのです。それに、派手な曲は、やはり人の心を元気にします。それを自分自身で演奏すると、何というか「わが世の春が来た!」みたいな気持ちになりますし、そのぐらい舞い上がってしまうものなのです。
同時に、演奏しながら「楽しい、うれしい、幸せだ」と高揚している奏者の気持ちが聴衆の皆さんにも伝わり、幸せな気持ちを感じて音楽を聴く喜びを味わってもらえたら、最高にうれしい。そうなるように、音楽的に音楽を演奏する努力をさらに重ねていきたいと思っています。
演奏によって聴衆の気持ちが幸せになる、あるいは癒やされる。「音楽って良いな」と思ってくださっていることを演奏後のお客さまの顔や拍手を通じて感じた奏者が幸せになり、さらに向上しようとチャレンジしていく――このような「音楽による幸せスパイラル」ができたらなと願っています。例えば演奏会に来る前は心が落ち込んでいた人が、私たちの演奏を聴いてだんだんと心がウキウキしてきて、「今日は演奏会に来てよかった」と思ってもらえるような音楽を提供できたら、音楽家冥利(みょうり)に尽きます。
――最高のパフォーマンスを行うために、日々の練習で気をつけていることは?
ホルンを吹きながら、自分が演奏する音色をよく聴き、細かく分析することです。改善する箇所を見つけやすくなりますから。いくら音楽的な演奏を心がけていても、場面に合ったきれいな音色でなければ台無しになるので、できる限り良い音を目指しています。
また、プロになっても苦手な奏法はあります。そうした苦手の克服には正面から立ち向かい、改善する方法をよく考えていろいろ試していきます。いくつかトライして、それで駄目ならアプローチの方法を変えてみる。そうやって独自に研さんしながら克服しています。
それからもう一つ。日頃の体調管理です。「なんだ、そんなことか」と言われるかもしれませんが、演奏家は想像以上に背中や腰の筋肉、手先や腕の関節を酷使します。トランペットやオーボエなどの場合は、相応の肺活量も必要となるので、心身ともにベストなコンディションを維持して本番に臨むという点では、スポーツアスリートと同様に体調管理が重要になるのです。
まずは水分補給を欠かさないよう気を配っています。これは奏者としてベストなコンディションを保つために大切です。息を吹いて音を出す楽器の場合、演奏すればするほど、体の水分も一緒に出ていきます。それに気づかずに吹き続けていると、頭の回転が悪くなって演奏に集中できなくなり、最悪の場合、脱水症状で倒れてしまいます。特に楽器を吹いている時に、水の入ったペットボトルをあらかじめ脇に置き、のどが渇いたなと思ったら、必要に応じて小まめに水分を取るようにしています。