WCRP/RfP日本委の「震災から9年目をむかえる宗教者復興会合」から セッション2「『今を生きるいのち』への連帯」

復興支援活動を紹介する金田氏、海老原氏、山﨑氏(写真左から)

ニーズに合わせた支援を持続的に

「『今を生きるいのち』への連帯」のセッションでは、移動式傾聴喫茶「カフェ・デ・モンク」を主宰する曹洞宗通大寺の金田諦應住職、「釜石支援センター望」の海老原祐治代表、一般財団法人「ふくしま百年基金」の山﨑庸貴代表理事がパネリストとして出席した。立正佼成会の和田惠久巳総務部副部長(国際宗教協力専任部長)がコーディネーターを務めた。

金田氏は、震災直後から始めた傾聴活動「カフェ・デ・モンク」の取り組みに言及した。「モンク(Monk)」は英語で僧侶の意。被災者と一緒にお茶を飲みながら、その思いや“文句”に耳を傾け、少しでも希望を持ってもらえるよう願い、避難所や仮設住宅で心のケアに努めてきた、と体験を紹介した。

また、仮設住宅から復興公営住宅への転居が進む被災地の現状に触れ、新たなコミュニティーで人と人とのつながりを再構築する重要性を指摘。仮設住宅は住環境に難はあったものの、誰もが人のぬくもりを感じ、支え合って日々を過ごしていたが、復興公営住宅では空間が閉ざされ、人の気配を感じられないため、多くの被災者は仮設住宅のような、つながりを求めていると語った。

さらに、自然や文明、生と死と向き合いながら、今、何ができるのかを深く問い続け、行動していくことが「宗教者の役割」と強調した。

海老原氏は、岩手・釜石市の復興状況に触れながら、被災者支援のあり方を詳述した。同市では、復興公営住宅の建設がほぼ完了し、ハード面の復興が進む一方、ソフト面の復興が遅れていると指摘。自力再建者の移住先での孤立や、被災を免れた住民と被災者との経済的、心情的な格差といった課題を解決するため、復興公営住宅にとどまらず、包括的な地域コミュニティーをつくることが重要と強調した。

さらに、「釜石支援センター望」の活動を紹介した。震災発生から8年が経ち、自立に伴って支援を拒む被災者が増加してきた状況に鑑み、支援対象を個人から地域全体へと切り替えた。地域住民が運営ボランティアを務める夏祭りや遠足といったイベント開催、体操教室や料理教室などのサロン活動による孤独死の防止や介護予防の取り組みを説明。住民一人ひとりの「その人らしさを回復していくことが、心の復興につながる」と述べた。

一方、山﨑氏は、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、福島県民の多くが今も、避難生活を余儀なくされている現状を説明。細分化する被災者のニーズや地域課題の解決に向け、NPO法人による持続的な支援がより重要になると強調した。

その上で、「地域の魅力や課題を知り、できることを考えたい市民」と、「地域を良くするために活動したい市民」、「資産を提供したい市民」をつなぐことを目的に、昨年4月に設立した「ふくしま百年基金」を紹介。市民一人ひとりの「福島を良くしたい」という志に基づく寄付を原資として、県内で地域の課題に取り組むNPO法人を援助する取り組みを説明し、「皆さんの思いが込められた寄付にこだわりながら、共に新しい福島をつくっていきたい」と語った。