カンボジアの農村を支えて JVCカンボジア代表・大村真理子氏
カンボジアでは現在、フン・セン首相の主導の下、外国資本を積極的に呼び込んでいます。その結果、中国や日本などの外国籍企業の活発な経済活動によって発展を遂げています。
しかし、発展の恩恵を受けるのは一部の人たちです。国内の貧困層の9割が農村で暮らしており、都市と農村の格差は広がり続ける現状があります。
こうした状況の改善のため、日本国際ボランティアセンター(JVC)はカンボジア北西部のシェムリアップ州チークリエン郡にある6カ所の村を対象に、農業支援事業を展開しています。
1970年代のカンボジアでは、ポル・ポト政権による大量虐殺や宗教弾圧が起きました。その政権が崩壊した後には、内戦が勃発したのです。特にシェムリアップ州では、93年の内戦終結後も治安が悪いまま回復せず、人々が平穏な暮らしを取り戻したのは97年の頃です。
この州では、昨今の気候変動の影響で干ばつや洪水に頻繁に見舞われ、稲作などの農業生産が打撃を受けています。さらに、企業による農地の開拓や、現金収入を得るために森林を伐採し、木材を販売する一部の住民らによる影響で、日常的な食べ物の採集など森林に頼って生活してきた人々の伝統的な暮らしが脅かされ、自然資源も失われてしまいました。
経済発展とともに農村社会でも現金収入の必要性が増す中で、以前の暮らしができなくなったため、約4割の家庭で大都市圏や隣国のタイなどへ出稼ぎをするようになりました。その結果、田植えの時期に必要な人手の確保が難しくなり、野菜も生産できなくなったことも重なって食料を購入しなければならず、生活も苦しくなっていきました。