核廃絶に向けて 宗教の役割を考えるシンポジウム 上智大学で
『核兵器禁止条約と日本の宗教の役割』と題したシンポジウムが9月20日、東京・千代田区の上智大学四谷キャンパスで開催された。主催は上智大学大学院実践宗教学研究科、ベグライテン、ミシュカの森。市民ら約200人が参加した。当日は、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の国際運営委員を務める川崎哲氏(ピースボート共同代表)が基調講演。立正佼成会軍縮問題アドバイザーの神谷昌道氏、全日本仏教会事務総長の戸松義晴師(浄土宗心光院住職)、カトリック司祭の光延一郎師(同大学神学部教授)が発言した。要旨を紹介する。(文責在編集部)
核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際委員・ピースボート共同代表 川崎哲氏 基調講演
人類は「核兵器と共存できない」
「核兵器禁止条約」の成立によって、核兵器をめぐる世界の秩序が大きく変わろうとしています。
昨年12月10日のノーベル賞授賞式では、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)を代表して、ヒロシマの被爆者でカナダ在住のサーロー節子さんと、ベアトリス・フィン事務局長が演説に立ちました。この中で二人が共通して訴えたことがあります。それは、「核兵器に頼る社会は異常である」ということです。
国際社会では、「核兵器は正当である」「核兵器があることによって平和と安定がもたらされる」という主張がいまだになされています。しかし、倫理的、道徳的に見て、核兵器は無差別・大量殺りくの兵器であり、国際人道法と両立できるはずがありません。核戦争が起これば、人類は破滅しますから、「自殺兵器」とも言えます。ところが、世界には1万5000発の核弾頭が存在します。大量破壊の自殺兵器に自分たちの生存を委ねるのは、いかにも異常なことです。
ノーベル賞委員会は、「核兵器とは共存できない」というメッセージを明確に発信してきたICANに対して、エールを送る意味で賞をくださったと理解しています。ICANは、世界100カ国以上の約500団体に及ぶNGOの集合体です。私が所属するピースボートでは、ICANの活動の一環として、ヒロシマ、ナガサキの被爆者に世界を回る船に同乗してもらい、各地で証言をしてもらう「おりづるプロジェクト」を行っています。180人近い被爆者が、被爆の苦しみと核兵器の廃絶を生の声として訴えてきました。