佼成学園・監督対談 女子ハンドボール部石川監督×男子アメリカンフットボール部小林監督 『勝利に導く指導力』(後編)
常に“日本一”を目指し
――現代の高校生ならではの特徴はありますか?
石川 時代は変わっても、本質はそれほど変わらないと思います。チームスポーツですから、コートの中で互いに声を掛け合うことが重要なのですが、入学してから2年生くらいまでは、本音をなかなか言い出せません。女子生徒特有なのですかね。気持ちをストレートに表すと、先輩や同級生から誹謗(ひぼう)中傷されるのではないかと恐れて思っていることを言わず、我慢してしまう子が多いのです。ですから、気持ちをしっかりと吐き出せるように、思っていることを言い合えるようになった上級生同士のミーティングに下級生を入れ、雰囲気をつかんでもらうようにしています。初めはカルチャーショックを受けますが、徐々に慣れていきます。
このほか、チームにわだかまりが生まれているなと感じた時には、練習時間の午後4時から8時までの全てをミーティングに当てることもあります。わだかまりが解消していなければ、それが一週間続くこともあります。みんなの前で本音を話してもいい、むしろ本音を話さないとチームスポーツはできないということを分かってほしいからです。
これまでの体験から、チームの文化を醸成するのは、上級生の考え方や行動だと思いますから、上級生が自らの役割を自覚することがチームづくりには欠かせません。こうした伝統が当たり前になるまでには、ある程度時間が必要でした。最近は親御さんもとても協力的で、こうしてご理解頂けていることが強みだと思います。
小林 親御さんの関心事も、選手のコンディションや応援団のこと、試合の日のお天気とか、チームをより良くすることに注がれていますよね。
私自身も、選手たちに最大限の力を発揮させるためにはどうすればいいか、また、どのような組み合わせが一番伸びるかというようなことばかり考えています。
石川 小林監督は、子供たちの前に立つ時に気をつけていることはありますか? 例えば、ピンチの場面で、全員の前では常に強気なことを言うよう心がけているとか。
小林 地でやっているだけですね。
石川 自然体なんですね。監督自身が自分をさらけ出して、飾らず、隠さない姿を子供たちに見せていらっしゃる。
小林 指導者になってから、子供たちに「自分らしく生きろよ」と言うわりに、監督や教員として言うべきことにこだわりすぎていました。自分が一番自分らしくなかったのかなと、昨年ふと自分の現役時代を思い出して気づかされました。石川先生はその辺りはどうしていらっしゃるんですか?
石川 授業の時は部活と違ってニコニコしていますよ。生徒たちに50分間楽しく運動をさせるのが教師の仕事ですので。でも、部活では、体育館を開けた瞬間に、「今日も日本一になるための練習をするぞ」と自分に気合いを入れて臨みます。そういう切り替えは、この30年間、意識してやってきました。監督が選手を見ているように、選手も監督を見ていて、その観察力はすごいですから、本気で臨まないとすぐに見抜かれてしまいます(笑)。
小林 自然とスイッチが入る感じですね。
石川 毎日のことですからね。小林先生みたいに自然体でやれるのが一番いいのだろうと、うらやましく思いますけれども。
小林 自然体といっても、グラウンドに入ると厳しいですよ(笑)。