特集◆相模原事件から1年――私たちに突き付けられたものは?(1) 牧師・奥田知志師

共に生きるために

――人と人とが互いを尊重していくには?

さまざまな立場の人が共に生きていくには、人が苦しみを抱えた時に、他人に「助けて」と言える社会になることが大切だと思います。残念ながら今はそうなっていません。経済的な生産性だけが強調され賛美される社会では、一人ひとりの中に「強くなくてはならない」「人に頼ってはいけない」、あるいは「他人に迷惑をかけるな」といった意識が根付き、苦しくても、悩みを抱えていても、他人に自分の弱さをさらけ出すことがなかなかできないからでしょう。

子供の自殺が問題になっていますが、なぜ彼らは助けてと言わずに命を絶っていくのでしょうか。それは、大人が「助けて」と言わないからです。自分の力で生き抜く人が立派な大人であり、「助けて」と言うのは弱く、ダメな人間だと子供たちには見えているのだと思います。そうした考えをやめて、人と人とがつながりを取り戻すために、苦しい時には「助けてほしい」と、素直に言える大人になる必要があると思います。

人は皆、弱い存在です。仮に今は、意気揚々と過ごすことができていたとしても、明日、どのような状況に直面するか分かりません。そうした誰もが有する「弱さを前提とした社会」をつくることで、全てのいのちをいとおしむ心のある社会が実現するのではないでしょうか。

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