令和6年次「お会式・一乗まつり」 爽やかな秋空の下 笑顔で行進
金沢教会 一乗物産展 感謝の気持ちを物産に込めて
「いらっしゃいませ!」
秋晴れの日差しがまぶしい大聖堂1階庭園に快活な声が響き渡る。一乗物産展に出展した金沢教会のブースでは、輪島塗が施される前の白木の箸や、『法華三部経』の経典用ブックカバー、地元で醸造されたしょうゆなどを袋詰めにしてセット販売。それぞれには教会サンガがしたためたメッセージカードも封入された。
今年、同教会のある石川県は災害に見舞われた苦難の一年だった。「震災が起きた時、物資の支援やボランティアなど、多くの方に助けて頂きました。本当に感謝しかありません」。こう話すのは、被災地域を包括する能登支部長(64)だ。絶望の淵に立たされながらも、全国から送られてくる支援物資や、駆けつけてくれる災害ボランティアの人たちに元気づけられた。被災した人々の思いを背負い、恩返しがしたいと一乗物産展への出展を決めた。
経典用ブックカバーは能登支部会員のSさん(68)の“お手製”だ。Sさんは普段、教会に足を運ぶことは少ない。しかし、震災当時、すぐさま金沢教会から物資が届けられ、ボランティアの人たちががれきの撤去などを行ってくれたことに驚いた。「皆さんへの感謝の思いを込めて作りました」。元々洋裁が得意だったSさん。震災の影響で店で生地を購入することができなかったため、隣近所から分けてもらい製作した。
当日は、向當亜希子教会長、被災地域を受け持つ支部長、青・壮年部員が精いっぱいの思いを込めて来場者と触れ合った。客との間で「また能登に遊びに行くね」というやりとりも。金沢教会の感謝の気持ちは購入した人々に届いていた。
練馬教会 一乗行進 難病の息子と歩いた470メートル
練馬教会の発進直前、「お立ち台」から、長男(16)に視線を向けると、笑みを返してくれた。「隊長」のFさん(48)は、その様子に安堵(あんど)し、メガホンを手に取った――。
隊長の声がかかったのは今年5月。有り難いと思う一方で、筋ジストロフィーを患う長男のことが脳裏をよぎった。長男は生活全般に介助を必要とするため、在宅時は常に身の回りの世話をしていた。
「息子のことでサンガに迷惑をかけるのでは」と、不安を抱くFさんの背中を押したのは萩原透公教会長の助言だ。「仏さまにお任せし、家族皆さんで参加してはどうですか」。その一言で心が定まり、夫は万灯、長女はマトイで参加。電動車椅子で行進する長男には医師と看護師のサンガが付き添うことになった。教会を挙げてのサポートに、感謝の言葉が見つからなかった。
当日、先頭に立って歩きながら、心に思い浮かんだのは義父だった。病床から長男の行進を心待ちにしていたが、10月上旬、帰らぬ人に。幼稚園児の長男を抱えて、一乗行進に参加するほどかわいがってくれた姿が思い返された。病院を訪ねるたび、「お役はどうだ。いろんな感情が湧いてきたら皆さんに結んでもらうんだぞ」と、いつも応援してくれる優しい人だった。
ゴール地点まで470メートルの道のりの中、これまで支えてくれた教会のサンガや家族の顔が、出来事が、次から次へと頭を巡った。
「ありがとう」。法輪閣駐車場に到着すると、汗を浮かべた長男の肩にそっと手を置き、Fさんは感謝を伝えた。