地域の非営利団体に協力する「一食地域貢献プロジェクト」(5) NPO法人「外国から来た子ども支援ネットくまもと」(熊本教会が支援)

「日本語は、日本で暮らすための“武器”」と語る「支援ネット」代表の竹村さん(左)。指導は一人ひとりのレベルに合わせて行われる

4月のよく晴れた日曜日。熊本城の“お膝元”にある熊本市国際交流会館の一室に、外国出身の中学生、高校生が一人、また一人と姿を見せ、教科書を広げて勉強を始めた。

日本語の会話を練習する中国出身の中学生の姿もあった。中学生は教材の例文に目を通すと、自身の額に手を当てながら「私は汗をかいていません。あなたは汗をかいていますか?」と、向き合うボランティアの日本人女性に語りかけた。言葉を早く習得したいという彼女のまなざしは、真剣そのものだ。

日本語指導と“心をほぐせる居場所”を提供

ここは毎週日曜日に、NPO法人「外国から来た子ども支援ネットくまもと」が開いている「おるがったステーション」。熊本の方言を交えて「私たちの場所」という意味だ。親の就職や結婚で一緒に来日した子どもたちに、学習支援と“心をほぐせる居場所”を提供している。代表の竹村朋子さんは「日本語ができなくて苦労するのは子どもたちです。外国に来て緊張状態にある子どもに、誰かが手を差し伸べなくては」と語る。

2003年当時、日本語学校で講師をしていた竹村さんの元に、子どもに日本語を教えてくれないかという相談が多く寄せられた。親と共に来日した子どもたちは日本の学校に編入するが、言葉ができないため授業についていけず、不登校になるケースが増えていたからだ。日本語学校の生徒は18歳以上という規定があったため、竹村さんは自宅で対応したが、一人でできることは限られ、09年に講師仲間と共に同支援ネットを設立した。

「支援ネット」では、日本語講師の指導向上のため、毎月、講師やボランティアへの研修も行っている

以来、県内の学校や各教育委員会に外国人の子どもに向けた日本語指導の必要性を訴え、講師派遣の取り組みも行う。多文化の共生が願いだ。

この日、「おるがった」に参加していた来日3年を迎える高校生の男子は、学校での日本語習得の支援が終了したため、復習をしようと訪れた。「会話は問題ないけど、教科書の言葉の意味が理解できないことがある」と話す。中国語で友達と勉強を教え合っていた高校生の女子は、「ここは、国籍に関係なく自分を解放できる、自分らしくいられる場所」とほほ笑む。

「同級生の輪に入れなかった子が日本語を習得してどんどん明るくなる姿を見るとね、大変なこともあるけどうれしい」と竹村さん。その表情はどこまでも優しげだ。

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この企画では、立正佼成会「一食(いちじき)地域貢献プロジェクト」が支援する団体の活動を紹介する。

メモ:一食地域貢献プロジェクト

「一食を捧げる運動」の浄財の一部を全国各教会が主体的に活用し、地元のニーズに応えて活動する非営利団体の支援を通して、温かな地域づくりに協力している。なお、「一食を捧げる運動」とは、月に数回食事を抜く、あるいはコーヒーなどの嗜好(しこう)品を控えて、その食費分を献金して国内外の諸課題に役立てる取り組み。
http://www.ichijiki.org