日本国憲法施行70年 「平和主義」は有効なのか?(2) 伊勢﨑・東京外国語大学大学院教授に聞く

国をどうやって守るか 今、日本は分岐点に差し掛かっている

――日本が進むべき今後の方向は?

集団的自衛権が名目上も容認されたのですから、これまでのように、9条がブレーキとなって働くとは思えません。こうした現状を踏まえ、「9条を進化する」時が来たと私は考えています。そういう意味で、私は改憲派です。

この70年、日本の国防は米国に委ね、それに追随していればいいという状態に疑問を抱かずにきた面は否定できません。しかし、部族や宗教の対立を米国は鎮圧できず、過激派の台頭など国際情勢は目まぐるしく変化しています。

周辺国との関係から、駐留米軍に日本から即時撤退してもらうという状況ではないものの、その傘下にあることにより危険に見舞われるリスクも格段に高まっているわけです。米国と仲良くしながら、どのような独自の道を歩んでいくかが今後問われます。

また、日本の国土は南北に細長く、半面、東西の距離はどこも狭く、「懐」がありません。この地形は、地政学的に防衛することが困難といわれており、だからこそ、戦前の日本は大東亜共栄圏を築こうとしました。高い武器を購入し、防衛予算を拡大していくことが国を守ることにつながるのかどうかも、私たちが考えるべき重要な課題です。

これらの状況を踏まえ、「敵をつくらない」国防戦略こそ、大事だと考えています。多様な文化、宗教、出自を持つ人を阻害せず、認め合って「融合」や「共生」に努めていくことでしか日本を守ることはできません。国際協力こそ国を守る――その決意と不断の努力こそ必要です。

プロフィル

いせざき・けんじ 1957年、東京都生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。インド留学中、スラム街の住民運動に関わる。その後、国際NGOの一員として、アフリカで開発援助に従事。国連PKO幹部として東ティモールで暫定政府の知事、シエラレオネで武装解除の任に当たる。2003年には日本政府特別顧問として、アフガニスタンで武装解除を担当した。現在、東京外国語大学大学院教授。『本当の戦争の話をしよう 世界の「対立」を仕切る』(朝日出版社)、『新国防論 9条もアメリカも日本を守れない』(毎日新聞出版)など著書多数。